暗くて地味、コミュニケーション能力皆無の実緒は、高校3年生の時、ある出版社の小説の新人賞を受賞する。ペンネームは「佐原澪」。当時は高校生だったこともあり話題となったが、6年経った今、佐原澪の名前を覚えている人間はいない。実緒はデビュー以降、スランプに陥り一作も小説を書けなくなっていた。自分のデビュー作が未だに置かれている書店へ行っては、誰か手に取らないかと監視する日々。するとある日、実緒の本を手に取る大学生風の男の姿を目撃する。思わずあとをつけ、彼の住むマンション、そして「千田春臣」という名前を突き止めた実緒は、それからというもの、今まで一行も書けなかったことが嘘のように小説を書くよう になる。その小説を春臣に送りつけることで満足感を得ていた実緒は、ひょんなことから彼の恋人・いづみと仲良くなり、奇妙な三角関係が始まる――。
透明人間は204号室の夢を見る 奥田亜希子 1,300円(本体)+税 2015年5月1日発売 装丁:セキネシンイチ制作室 装画:オチマリエ |