気象庁 火山カメラ画像 静岡県「ライブカメラ富士山ビュー」
内容紹介


四六版ハードカバー・488ページ
定価:1900円(本体)+税
ISBN978-4-08-771618-4
装丁:今井秀之

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富士山噴火
高嶋哲夫

『M8』で首都直下型地震を、『TSUNAMI』で巨大津波を。
常に最新の研究データに基づいて予言的ともいえる数々の防災アウトリーチ小説を生み出してきた高嶋哲夫。待望の最新作で切り込むのは富士山の大噴火!
噴火予測年は2014年±5年、想定死者数最大1万3千人、被害総額2兆5千億円ともいわれる、直近かつ最大の危機に真っ向から挑むとともに、
父と娘の絆の再生を描き出す。
感動のノンストップ防災サバイバル・エンタテインメントが誕生した!!




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アウトリーチ=啓蒙・教育活動。自然災害を扱う〝アウトリーチ小説〟は、限られた作家にしか書けない
 
鎌田教授は、開口一番に高嶋氏の『富士山噴火』を〝アウトリーチ小説〟と表現した。この聞き慣れない作品ジャンルには、どんな意味があるのか?
鎌田 アウトリーチを直訳すれば〝手をさし延べる〟となりますが、学術の世界では「啓発・教育活動」、つまり一つの研究分野が、その価値と意義を他の分野の研究者や一般の人々に対して積極的にアピールしていく活動を意味します。文芸作品もまた多種多様な職業・年齢層の読者に向けて発信されるのでしょうが、高嶋さんの新作小説『富士山噴火』の場合は、いつ起きても不思議はない自然災害の恐ろしさと防災の必要性をひときわ強く打ち出している点で、「アウトリーチ小説」と形容するのが最も適切だと思うのです。
高嶋 正直なところ僕も、『M8』以来の作品について〝災害シミュレーション小説〟〝防災サバイバル・エンタテインメント〟といったくくり方をされてきたことに、少し抵抗感がありました。おこがましく高所に立って啓蒙するつもりはないのですが、今回の『富士山噴火』を含めた4作品は、生々しい自然災害の破壊シーンを再現するのが目的ではなく、あくまでも有事に読者が生き残る手立てになればと願って書いたのです。だから鎌田先生からアウトリーチという新しい定義づけを戴いたことは、とても嬉しく誇りに思います。
鎌田 しかも自然科学をテーマにしたアウトリーチ小説となると、より限られた作家にしか書けないと思います。やはり高嶋さんの場合は、理系出身でサイエンスの素養を備えておられることが、作品の完成度の高さにつながっているのでしょう。火山学者の立場からみても、科学的な正確さがベースに貫かれているので安心して読み通せました。
高嶋 今回の作品はフィクションであると同時に、これを読めば火山についての基礎知識と最新情報が一通りわかるように構成しています。そのために、鎌田先生の『富士山噴火』(ブルーバックス)も大いに参考にさせてもらいました。この本に書かれた火山学の知識が、どれほど執筆に役立ったか知れません。

3.11以降、日本各地のマグマ溜まりが不安定に。“マグマ溜まりの天井にヒビが入った”富士山も、いつ噴火してもおかしくない
 
鎌田 作品を発表されたタイミングも絶妙ですね。西之島新島、御嶽山、桜島、口永良部島、浅間山など日本列島各地の活火山が相次いで噴火しているなかで、この新作小説への注目度は必然的に高まるでしょう。作品中では、昨年の御嶽山噴火と今年の口永良部島噴火についても触れられていますが、いつ頃から執筆にとりかかったのですか?
高嶋 元々は3年ほど前に『電気新聞』という業界紙で連載した内容に、かなり大幅な改編を加えて現在の形にまとまりました。
鎌田 時期としては「東日本大震災」の後からですね。やはり、あの巨大災害が執筆のきっかけになったのでしょうか。
高嶋 実は、『M8』で直下型地震、『TSUNAMI』で海溝型地震と津波、『東京大洪水』で巨大台風と洪水を書いてきて、自然災害はもう終わりと思っていました。でも、地震について調べていると、世界ではM9クラスの巨大地震のあとには非常に高い確率で近隣の火山が大噴火しています。それに、富士山は300年余りも噴火していません。そろそろだな、とは思っていました。
 今回の東北地方太平洋沖巨大地震で日本列島地下のプレート構造は激変したと言われ、3.11の4日後には富士山直下で強い地震(「静岡県東部地震」M6.8、最大震度6強)が起きています。もし南海トラフ巨大地震がおこれば、おそらく富士山も噴火すると思います。それで、やっぱり書いておこうと。
鎌田 日本列島が激しく揺すられた3.11以降、特に東北地方の陸上は推定5.3m、海底は20mほど東方向へ引っ張られ、各地のマグマ溜まりが不安定になっています。そのため富士山についても、われわれ火山学者は「マグマ溜まりの天井にヒビが入った」と表現しているわけです。富士山の歴史を振り返ると、前々回の「永正噴火(1511年)」から約200年後に前回の「宝永噴火(1707年)」が起き、それから300年間も休み続けてきたので、マグマが大量に溜まっているのは間違いありません。
 また日本列島全体では、大火砕流が発生して何百人もが犠牲になるような噴火が100年に数回といったペースで繰り返されてきたのに、なぜか20世紀は妙に穏やかな状態が続いていました。だから富士山については、「そろそろ、いつ噴火してもおかしくない」と、ことさら警戒せざるを得ないのです。
高嶋 やはり自然災害は科学ですよね。僕も神戸で阪神・淡路大震災を経験しました。これは絶対に残しておかなくてはならないと思って、『M8』を書きました。そのとき日本の地震について勉強したわけですが、日本はかなり怖い国だということが分かりました。それで『TSUNAMI』を書いたのですが、執筆途中の12月に「スマトラ島沖大地震」とインド洋津波が起き、その六年後に東日本大震災が起きました。
鎌田 それは、まさにシンクロニシティ(同時性)ですね。意図しないタイミングのよさというのは、作家ならではのインスピレーションが呼び寄せるのだと思います。つまり高嶋さんの作品が読者を惹きつけるのは、そうしたシンクロニシティの流れがあるからでしょう。

富士山の偉大さと美しさ、未来とともに、災害に立ち向かう人間の優しさを描きたかった
 
 高嶋氏が『TSUNAMI』の中で引き起こした〝東海・東南海・南海連動型〟巨大地震は、過去に極めて高い確率で富士山噴火にも連動してきた。従って『TSUNAMI』のストーリィの延長線上という意味でも、富士山噴火の小説化は必然的な成り行きだったと言えるだろう。
高嶋 『富士山噴火』は『TSUNAMI』で描いた「平成南海トラフ大震災」の3年後という設定です。時系列的には『M8』『東京大洪水』、『TSUNAMI』、『富士山噴火』となっています。これらの4作品は、共通な登場人物はいますが、主人公はすべて違います。
 小説の醍醐味はやはり登場人物の心の変遷だと思います。巨大災害に立ち向かう、肉体的には弱い人間の心の強さ優しさが描ければと思っています。今回の主人公は陸自ヘリのパイロットです。彼は「平成南海トラフ大震災」で、人命救助にあたりますが、妻と息子だけは救えませんでした。
 テーマは現在の富士山の偉大さと美しさ。古代からの形成の歴史と変遷、未来を描くこと。そして、災害で傷ついた父と娘の再生と和解の物語として読んでいただけると有り難いです。
鎌田 ネタばらしになるので詳しくは言いませんが、その父と娘のやりとり、物語の結末に訪れる展開には、私も非常に感動させられ思わず涙がこぼれました。富士山噴火の前兆からクライマックスまでを科学的知見に沿って描写しただけなく、新居見親子をはじめ多くの作中人物たちの人間ドラマが織り込まれているところに、火山学者には成し得ない文芸作品の真骨頂を感じました。
 実際に起きる自然災害は、建造物や社会インフラの大破壊だけなく、生き残った人間の心にも一生の悲しみやトラウマを刻み残します。それらは、どうやっても科学者が数式では計れないことで、高嶋さんのような人間心理の描写に巧みな小説家でなければ表現できないのです。

富士山は“噴火のデパート”。そして、富士山噴火の“一ヶ月ルール”が、小説手法の決め手となった
 
高嶋 有り難うございます。ただ先ほど申したように、僕もまた鎌田先生の『富士山噴火』の内容と、これまでに講演会やテレビ番組のコメンテータとして述べられてきたご見解などを作品に反映させてもらいました。その最たるものが、富士山噴火の「一か月ルール」です。つまり、富士山は噴火の「兆候」が出始めてから実際に火を噴くまで一定期間の猶予があり、これが被害軽減の準備期間にあてられるという救いの部分があればこそ『富士山噴火』が書けたといえます。
 それと同時に、この一か月ルールはスピルバーグ映画『ジョーズ』の演出のように、あらかじめ起きるとわかっている恐怖のクライマックスへ向けて、どんどん緊迫性を強めながら読者を引き込んでいく小説手法の決め手にもなりました。
鎌田 富士山噴火の一か月ルールというのは、1707年の東海・南海・東南海連動型「宝永大地震(推定M8.6からM9)」の49日後に「富士山宝永噴火」が起きたことから導き出したものです。ただし、その宝永噴火は江戸時代の出来事なので、大地震から富士山噴火に至るまでの期間にどんな異変があったか科学的には突き止められません。この一か月ルールは、『京大人気講義 生き抜くための地震学』(ちくま新書)で私が初めて提案したのですが、その後、火山学者のあいだで物議を醸しました。たとえば、決して一か月ちょうどで噴火したわけではないので、「厳密でないことは言うべきではない」などと、批判する同業者がいたのです。
 しかし大切なのは、富士山はいきなり「ドカン!」と大爆発するのではなく、噴火が近づけば群発地震や山体膨張、噴気現象といった何らかの前兆現象が観測されるということです。その期間が3日かもしれないし、一か月かもしれないし、1年かもしれないと専門家が言ったら、一般の人には雲を掴むような話しで理解してもらえないでしょう。だから、あえて私は敢えてわかりやすく一か月ルールという言葉を使って、富士山噴火が近づいているとしても防災・減災の余地はゼロではないのだと強調したいのです。
 もうひとつ、よく私が一般向けに話す「西暦2030年代に南海トラフ巨大地震発生」という考え方についても同じです。地震学者は「今後○○年以内に、○○%」と、正確な科学情報を伝えるべきだと反論しますが、私はそれでは一般市民の目線に立っていないと思うのです。そのようなパーセントの正確な確率よりも、具体的に2030年代と示した方が、「あと15年か」と直ちに理解できるでしょう。このように表現しないと、一般のビジネスパーソンにも行政官にも役立つ情報にはならない、というのが、私の譲れない持論なのです。
高嶋 実際の火山学において、富士山で「あっ、ついに来たな?」という兆候が起きるとすれば、鎌田先生は最初にどんな現象に注目されますか?
鎌田 山体直下のマグマや高圧の熱水が移動する際に観測される「低周波地震」が最初の兆候ですね。その後、多くの場合に有感地震や火山性微動が上方へ移動してきます。また、火山ガスの上昇や山がわずかに膨らむなどの前兆が起き始めます。特にガスについては、その成分が重要な判断材料になります。ただ前回、江戸時代に起きた宝永噴火の観測記録がないので、富士山噴火もどんな予兆が出てくるかは本番になってみなければわからないというのが正直なところです。

「過去は未来を解く鍵」自然災害の科学的予知は可能な時代に突入しつつあるのか?
 
 昨今は国家を滅ぼしかねない巨大災害を、色メガネを通して見る向きも少なくない。つまり政府と学術研究者は大地震と火山噴火の襲来時期を高い予測精度で把握しているが、パニックを恐れて国民には隠しているのではないか? という疑念の声だ。
 また、ここ1~2年間で日本列島中の火山活動が目に見えて盛んになり、富士山からわずか25km離れただけの箱根山で約千年ぶりの噴火が起きたことも気になる。やはり、今回の箱根山の火山活動も、富士山噴火の接近を告げる前兆の一つではないのか?
鎌田 まず、国や学術界が災害に関する重大情報を隠蔽することなど、まったくあり得ません。少なくとも火山学者というのは、一般の人々が考えている以上に正直……馬鹿正直なんですよ。だから全部ありのままに公表しています。
高嶋 僕も、そう思います。まあ3.11の直後に原発事故関連の情報が少し曖昧にされたことが、あらぬ疑いを強めた感じもしますが。
鎌田 例えば地震・火山活動については、いくつもの研究機関から24時間リアルタイムの観測データが自動配信され、日本国内だけでなく世界中で共有されているんです。ところが、波形グラフの微妙な変化などは気象庁の当直担当者でも見落とす場合があり、まず一般の方たちには解析できません。
 だからこそ、複雑な情報をかみ砕いてわかりやすく伝える専門家がいなければなりません。それが高嶋さんが書いた今回の小説であり、私のテレビ番組解説や一般向けの入門書なのです。私が『富士山噴火』を書いたのも、富士山は火山についての知識を広めるのに打ってつけのテキストになるからです。すなわち、〝噴火のデパート〟と称されるほど、これまで富士山はバラエティに富んだ噴火災害を繰り返してきた。だから、富士山の火山学さえ学んでおけば、他の全ての活火山に応用できるのです。
高嶋 最近、誰もが注目している口永良部島や箱根火山の噴火も、やはり富士山噴火の〝一ヶ月ルール〟の範疇に入るのでしょうか。
鎌田 これらは全く別の現象です。それぞれの火山が異なるマグマ溜まりを持っており、互いに関連性はない。今回、箱根が噴火したからといって、それは富士山噴火とは関係がないのです。つまり、富士山が噴くときは、まったく箱根とは別個に噴く。そのように正しく理解しないと、それこそ余計な風評被害を招きかねません。
高嶋 やはり僕を含めた大衆の大きな関心事は、自然災害の科学的な予知が可能かどうかです。地震については、GPS(全方位衛星位置情報システム)を使って発生日や震源をかなり正確に予測したと主張する、地震学とは畑違いの科学分野の研究者もいます。こうした最近の流れを、〝本流〟の学者たちはどう見ているんでしょうか。
鎌田 地震学のプロは、〝手法の問題〟があると言いますね。火山の場合は、「富士山が何月何日に噴火する」と予告しても、それは信じるに足る根拠がないと皆がわかっています。しかし地震については、発生頻度が多く震源地も広範囲なので、当たってしまうことがある。そして「ほら、当たったじゃないか!」と言われれば、それを打ち消せなかったりするわけですね。
高嶋 現在、科学技術は様々な分野で指数関数的に進歩しています。まったく異なった分野で先端をいく科学技術や理論を取り入れることで、一つの別分野が飛躍的に進歩する可能性が大いにあり得るんじゃないかという気がします。だからGPS技術なども、より精度が高まれば一地点の膨張とかズレの位置情報を検知するだけで、地震や火山活動の予測に応用できる日が遠からず来るのではと期待しています。
鎌田 もし近々に富士山が噴火するならば300年ぶり、御嶽山では数千年ぶりとか……。そうした時間幅の長さが、次期噴火を予測するために欠かせない初期設定値を不安定にしているのが現実です。しかも富士山は噴火のデパートだから、噴火にともなう「火砕流」や「溶岩流」、「山体崩壊」など災害に結びつく複数の現象が次々発生しかねません。つまり地震よりもずっと多くの初期データを用意しなければならないのに、近代火山学が蓄積してきた情報量はまだあまりにも少ない。これが火山学の決定的な弱点になっています。我々には「過去は未来を解く鍵」という知恵はあるけれど、直近の噴火ケースを研究するだけでは、次に起きる事態を予測するのは、ほとんど不可能に近いのです。

古来から信仰の対象であり圧倒的な自然の力を伝える富士山の美しさに変わりはない
 
 しかし、火山噴火の完全予知がままならない現状とはいえ、少なくとも一か月ルールは人的被害の大幅軽減に結びつく。そして日本では1992年から国土庁(当時)の指導で全国各地の火山地質を可能な限り調べ上げ、活火山ごとの「ハザードマップ(火山災害予測図)」の作成が行われてきた。その具体的な中身は鎌田教授の著書『富士山噴火』(ブルーバックス)の章立てにある通り、「火山灰」「溶岩流」「噴石」「火砕流」「岩なだれ(山体崩壊)」「泥流」に大別できる。
 高嶋氏の『富士山噴火』は、まず山麓各地の噴気現象や山体膨張など一か月ルールに基づく予兆の推移を追い、続いて複数のハザードマップを参考に火山災害の拡大と住民避難の時間的な勝負を描いた。ここで最大の読みどころとなる新噴火口の誕生について聞いてみたい。前回の宝永噴火のような「山腹噴火」ではなく、高嶋氏が「山頂噴火」を選んだ理由は?
高嶋 これは科学的な知見からじゃなくて、僕の考えです。やはり富士山の噴火は山頂からでないと駄目だと思って。それに単に大噴火で壊してしまうと、日本人としては非常に悲しい。地球はこの先、何千年も何万年も続いていきます。未来はどう変わるか分かりません。希望を抱ける富士山にしなくてはと、考えた末にこうなりました。その辺はぜひ小説でお読み頂きたいものです。
鎌田 小説『富士山噴火』の結末部分は、もはや火山学的にどうのこうのではなく、フィクション上の自由な想定として何ら問題はありません。実際、今度の噴火口がどこに出現するかは神のみぞ知るで、本当に高嶋式の山頂噴火が起きる可能性もあるのですから。
 とにかく、この小説の意義深いところは、今の段階でわかる限りの富士火山に関する科学的知識がちりばめられていることです。昨年の御嶽山噴火は実に痛ましい悲劇を引き起こしましたが、それでも日本人にとって火山は古来から信仰の対象であり、自然界の圧倒的な力を実感させてくれる貴重な存在に変わりありません。
高嶋 そうですね。今、全国各地で火山活動が強まっていることから、観光地としての活火山から客足が遠のく事態にもなっています。けれど火山ハザードマップは地域自治体の避難計画だけでなく、登山者個人の危険回避にも大いに役立ちます。よって貴重な情報源として日本人誰もが知っておくべきです。そんな火山との正しい付き合い方が、鎌田先生と僕が書いた二冊の『富士山噴火』から、きっと見つかると思います。

(2015年6月29日 京都大学鎌田研究室にて)
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担当編集者より

あなたの命を救う手立てとなるために――

<噴火予測年は2014年±5年――>。編集中、何度も確認をされた数値です。
琉球大学名誉教授の木村政昭さんによると、しかも、±5年というのは誤差範囲。(※1) つまり、2015年現在すでに、富士山が噴火すると予測される5年の期間に突入しているということです。
昨年の御嶽山噴火以降、口永良部島、浅間山、箱根山……と次々に火山が噴火。桜島、西之島、阿蘇山など内閣府の警戒下にある活火山をはじめ列島の火山が大活動期に入った今、改めて「活火山の上に住んでいる」という自覚を深めている方は多いのではないでしょうか。
富士山の噴火は、同じく高嶋哲夫さんが『M8』『TSUNAMI』で描いてきた〝南海トラフ大震災(東海・東南海・南海連動型地震)〟とともに、直近かつ最大の自然災害のひとつといえます。

著者から「電気新聞」連載時の原稿をお預かりしたのは御嶽山の噴火以降。2年以上にわたる構想・執筆時から状況は驚くほど大きく、また刻々と変化していました。次々に飛び込んでくる噴火のニュース、改訂される法律や行政の対応を、できうる限りアップデイトしつつ、エンターテインメントとしてさらなるクオリティを追求する――。校了の最後の最後まで続けられたそれは、高嶋さんが、単なる「シミュレーション小説」を書きたかったのではないからです。『富士山噴火』が、将来起こる危機から多くの命を救う手立てとなりうるために、最大限の力を惜しまないという覚悟の表明でありました。

「富士山は活火山です。必ず噴火します」。――近い将来に、という一言を添えながら、高嶋さんはきっぱり。富士山が、また、大変動期に入っている日本各地の活火山が大噴火したときに備え、正確な知識を得て欲しい、被害を最小限に食い止めるための指針として一人でも多くの人に、「その時、何が起こるのか」「どうすれば生き延びられるのか」を知って欲しい。そんな思いを込めて描かれた人間ドラマは、まさしくノンストップ防災サバイバル小説。
地震、津波、洪水、原発事故……と多くの「危機」からのサバイバル法を著作に込めてきた著者の、渾身のメッセージを受け止めていただければと思います。
 ちなみに担当は、編集作業中、帰宅後に思わず、防塵マスクと眼鏡の上からも装着できるゴーグルをポチリました。今は調理用のラップもストックを切らさないように気をつける日々。家人には「大げさな」と笑われていますが、いつかきっと役に立つ日が来ると思っています。
なぜラップかって? その理由は――どうぞ『富士山噴火』でお確かめください。(編集T・K)

※1 「木村政昭ホームページ」より
http://kimuramasaaki.sakura.ne.jp/site2/2015/06/02/1038/

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