第22回 小説すばる 新人賞受賞作 子供でいられない子供たちと大人でいられない大人たちの孤独が作り上げる新しい世界。| 白い花と鳥たちの祈り
著者 河原千恵子(かわはらちえこ) <略歴>1962年東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。本作で二十二回小説すばる新人賞受賞作。
書評
井上ひさし氏 「小説すばる新人賞」選評より
物語の断片をたくさん取り集め、それらを慎重に組み合わせて新世界を構築し、その新世界を言葉で地道に実現し、しかも作品全体に好ましい小説的うねりを与えているところに、可能性を感じたわけである。またたとえば、郵便局員の中村青年のような、深刻な過去と清々しい魂を持つ人物を上手に書いていて、これから先が楽しみである。
五木寛之氏 「小説すばる新人賞」選評より
私は最初から『なくしてしまったはずのもの』(元題)に惹かれるものがあった。ある意味で天性の文学的センスというか、そんな感覚を身につけた作者のように思われたからである。
2010年、いきなり僕の中での本年度ナンバー1登場です。
(文教堂書店 三軒茶屋店 中川浩成さん)
キャラクターが良い、台詞が良い、夢中になって読むのをやめられませんでした。
(ブックファースト三宮店 山下僚子さん)
白い花と鳥たちの祈り 河原千恵子
内容紹介
居場所のない中学生と仕事の出来ない郵便局員。 二人の前に拡がる新しい世界。
中学一年生のあさぎは、母の再婚と私立中学への入学を機に新しい町に越してきた。新しい家族にも新しい学校にも馴染めない彼女の心の拠り所は、近所の郵便局に勤める青年、中村さんだった。
――だから私は、中村さんのその「にこっ」という個人的な笑顔を見に郵便局に通うのを、誰にも秘密の、ささやかな楽しみにするようになっていた。
母の再婚相手・冬木が赴任先から帰国し、一緒に暮らすようになるが、お互いに無口なためコミュニケーションが巧くとれない。また本来クッション役になるはずの母が妊娠し、つわりがひどくて寝込んでいる。
一方、中村は周囲が普通にできることを巧くこなせず、上司が変わり民営化が進む郵便局で、ますます仕事に行き詰まり、漠然と死を意識するようになっていた。
スペシャル
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