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我が家のヒミツ
奥田英朗
2015年9月25日発売
定価:本体1,400円+税
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著者プロフィール

奥田英朗 Hideo Okuda
1959年岐阜県生まれ。雑誌編集者、プランナー、コピーライターを経て、
1997年『ウランバーナの森』で作家デビュー。
2002年『邪魔』で大藪春彦賞、2004年『空中ブランコ』で直木賞、
2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、
2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。
小説に『無理』『噂の女』『沈黙の町で』『ナオミとカナコ』、
エッセイに『どちらとも言えません』『田舎でロックンロール』など著書多数。
書評

「ヒミツ」はかすがい 瀧井朝世

奥田英朗さんの家族短篇集『家日和』『我が家の問題』は、今どきの家庭が抱える問題をユーモラスに、かつ温かく切り取る作品だった。第三弾となる新作の題名は『我が家のヒミツ』。家族それぞれのヒミツとは?
結婚したがなかなか子供ができず、その話題を避けている妻が、やがて夫の思いを知る「虫歯とピアニスト」。勤続三十年目にして出世競争に負けたサラリーマンの、妻にも言えない敗北感と心の変化を描く「正雄の秋」。タワーマンションで夫と暮らす産休中の妻が隣人の不可解な行動に気づき、密かに行動を起こす「妊婦と隣人」。また、前の二冊と同じく、最終話では小説家の大塚康夫の一家が登場する。四十二歳で妻のロハス志向に辟易し、四十六歳で妻のマラソン熱を見守った康夫は本作「妻と選挙」では五十歳。作家としての自分が第一線から外れたと実感している折、入れ替わるように専業主婦の妻が市議会議員選挙に出馬すると表明してびっくり。相変わらず妻の良き後方支援部隊長である彼は、今どきの良き夫の手本ではないか。
なるほどと思ったのが次の二篇。「アンナの十二月」は母親の再婚相手に不満はないものの、初めて実の父親に会いにいく高校生アンナの物語。実父が著名人であることに浮かれる彼女に対し、同級生たちが彼女の育ての父親に対しての気遣いを見せるのだ。また、「手紙に乗せて」では母親に急逝された青年が、一年前に妻を亡くした上司から、父親について心配をされる。どちらも、家族の外側にいる人間に、自分の身内が抱いている思いに気づかされるのだ。家族だからこそ見過ごすこと、あるいは相手に言いづらいことはたくさんある。つまり「ヒミツ」の存在は、思いやりの証なのだ。そこに優しく気づかせてくれる存在はありがたい。
そして、それぞれの思いが共有される時、個々の「ヒミツ」は家庭のかすがいになる。その瞬間を掬い取った本作は、クスクス笑わせながらも、いつしか胸を熱くさせるのだ。

たきい・あさよ●ライター
(「青春と読書」2015年10月号掲載)
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