あらすじ

絶声

親父が死んでくれるまで
あと一時間半──。

もう少しで巨額の遺産が手に入る。大崎正好はその瞬間を待ち望んでいた。
突如、本人名義のブログが更新されるまでは……。
『私はまだ生きている』
父しか知り得ない事実、悔恨、罪などが次々と明かされていく。
その声が導くのは、真実か、破滅か。
驚愕のラスト&圧倒的リーダビリティの極上ミステリー!

絶声

絶声下村 敦史

2019年8月5日発売定価:1,600円(本体)+税

四六判ハードカバー288ページISBN:978-4-08-771185-1

著者プロフィール

下村敦史(しもむら・あつし)

一九八一年京都府生まれ。二〇一四年『闇に香る噓』で江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。数々のミステリランキングで高評価を受ける。一五年「死は朝、羽ばたく」が日本推理作家協会賞(短編部門)の、一六年『生還者』が日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)の候補になる。著書に『真実の檻』『サハラの薔薇』『黙過』『悲願花』『刑事の慟哭』などがある。

著者コメント

書評

死んだはずの父の声が、波乱を呼ぶ 書き手:今村昌弘(いまむら・まさひろ) 作家

下村敦史は希け有うな作家だ。

ミステリでは往々にして遺産をきっかけに事件が起きる。時には人を殺(あやめ)るほど金銭──特に他人から転がり込む大金には人間を狂わせる魔力がある。

下村敦史『絶声』において事件の引き金になるのは昭和の大物相場師と呼ばれた堂島太平の遺産。彼は約七年前、膵臓がんに冒された身で自宅から失踪した。主人公の正好と二人の異母兄姉はそれぞれ大金が必要で、一刻も早く遺産を相続したい。膵臓がんだった太平がどこかで生き長らえている可能性はゼロに等しく、三人は彼の失踪宣告、つまり法律上の死亡扱いの成立を今か今かと待ち構えていた。しかし時計が失踪から七年を刻もうとした瞬間、驚くべき報(しら)せが入る。

太平が失踪以前に作ったブログが更新されたのだ。本人にしか更新できないはずなのに、なぜ?

このままでは失踪宣告が認められない。動揺し、また憤(いきどお)る相続人たち。彼らの思惑をよそに、ブログは立て続けに知られざる真実を吐き出していく──。

遺産、相続人、過去。

金、愛、人生。

物語を構築する要素は至って明快なのに、ページを追うごとに謎は深まり、主人公を取り巻く状況は加速しながらめまぐるしく姿を変える。

たとえるならば一級の手品、あるいは数学の名問だろうか。謎を解くための鍵は文字の渦に隠されることも、無理矢理な偽装に糊塗されることもなく、夢中でページをめくり続けた読者はいつの間にか鍵を握りしめていたことに気付くのである。

人の命とは常に重厚なテーマだ。しかし下村敦史の手によって大胆、そして繊細に物語に織り込まれたそれは、我々の前に立ち塞(ふさが)るのではなく、同伴者として長い思索の道を寄り添ってくれる。

新米ながら同じミステリ作家として、この絶妙なバランス感覚に感服せずにはいられない。

下村敦史は本当にレベルの高いことをいとも簡単そうにやってのける、希有な才能の持ち主だ。

担当編集の推薦コメント

応援コメント

紀伊國屋書店仙台店・齊藤一弥さん
最初の一行から惹き付ける!
「親父が死んでくれるまであと一時間半」。いやいや、人の死期がそんなにキッチリわかるわけないでしょう。なんて思っていたら、そういうことか。で、更新されたブログ、関係者の証言……。怪しい、怪し過ぎる! そして掻き立てられる“この謎を解きたい”という気持ち! 父親は生きているのか。死んでいるのか。結果、今回もまた作品に隠されたカラクリに気付けず、下村ミステリーにやられました。
東京旭屋書店アトレヴィ大塚店・北川恭子さん
とても面白かったです。ミステリーでもあり、人間にとって大切なものは何なのかを考えさせられる、深い小説でした。
有隣堂伊勢佐木町本店・佐伯敦子さん
面白い!! 下村敦史さん(シモムウ)は、今や若手ミステリー作家のファーストランナーですね。謎がさらに謎を。そのうえに50/80問題しかり、お金はあっても親の面倒をみる人というのは、なかなかいないものなのでしょうか。すごい、ともかくシモムウすごい! そしてシモムウミステリのお約束(?)のありところで視点がガラガラと変わるときの爽快感といったら!! さすがです。
伊吉書院西店・安保貴司さん
膵臓がんにおかされた父親の遺産(死んでるか?)をめぐっての話。父親が死亡認定まであと少しとなったところからブログが更新されていき、どうなるのか? 最後は実は生きていたと言って出てくるのか? まさかの展開が最後にあり、本当に読み返してしまいました。
ブックマルシェ 津田沼店・渡邉森夫さん
もしトリックアートを言葉に分解して小説にしたら出来上がった作品はこの作品になるのかもしれない。
1度読んでも2度読んでもいつまでもゾクゾクさせられる作品に出会ってしまった。
大垣書店京都本店・中澤めぐみさん
富豪の死。その遺産を狙う親族、そしておこる悲劇…。『犬神家の一族』に代表されるような王道材料だというのになんとも現代らしい新しい王道が登場したな!と。
殺人事件ではなく、人の孤独が何よりも現代の悲劇なのかなと…それまでの行いの結果とはいえ、そういう生き方をしてきたことが…。読みおわって二度読みはもちろんですが、タイトルの『絶声』にたくさんの複雑な感情が浮かんできました。
少ない登場人物の会話で進む物語。舞台とか劇場で公演してほしい! 演劇向きやと思いました。
TENDO八文字屋・石山泉さん
『絶声』、読みに加速がついて、一気読みしてしまいました。それぞれの「心」が変化していく様子がさらに面白く、深く心の中に入り込んでいくようでした。父親はどんなであれ、がんばって生き抜いたんだなとほっとしました。
三省堂書店有楽町店・内田剛さん
いま最も“雄弁”な作家・下村敦史は一体どれ程多くの引き出しを持っているのだろう…新作ごとに進化し続ける筆力は強くて確かだ。まさに二度読み必至…。鮮やかなトリックに快感!! 欲に塗れた醜い争いから人間の素顔を暴き出す…そのテクニックはエグすぎる…。このサプライズを知ってしまったが、最後、絶対誰かに話したくなるはずだ!!
ジュンク堂書店名古屋栄店・西田有里さん
更新される父のブログの内容に何か違和感はありましたが、ラストに驚きました!!
するすると解けていく違和感の正体と策略に溺れた遺産の行方が気になって、終盤は一気に駆け足で読みました。エピローグで正好の父への想いに救われた気持ちになりました。
鹿島ブックセンター・八巻明日香さん
『絶声』を読んで、ラストに絶句。そう来たか!と。
次から次へと出てくる新事実、彼らの攻防の行方…
興奮さめやらぬまま、過去のブログを読み返しました。

絶声

絶声下村 敦史

親父が死んでくれるまであと一時間半──。
もう少しで巨額の遺産が手に入る。大崎正好はその瞬間を待ち望んでいた。
突如、本人名義のブログが更新されるまでは……。
『私はまだ生きている』
父しか知り得ない事実、悔恨、罪などが次々と明かされていく。
その声が導くのは、真実か、破滅か。
驚愕のラスト&圧倒的リーダビリティの極上ミステリー!

2019年8月5日発売定価:1,600円(本体)+税

四六判ハードカバー288ページISBN:978-4-08-771185-1

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