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朝井リョウ×青羽悠さん対談
大友花恋さん書評

※物語の結末に触れています。

 私と同い年の男の子が書いた小説って、どんなだろう。
 読書が趣味の方の中には、一度や二度、自分で小説を書いてみようかなと思ったことがある人も多いはず。例に漏れず、私もその一人。一度挑戦してみて、全然うまく書けなくて諦めたくせに、性懲りもせずまた挑戦。でもやっぱり書けないものは書けない。笑
 だからこそ、この本を手に取った時、私はとてもワクワクした。同い年で新人賞。どんな話だろう。とても期待した。冒険なんてしたことないが、まるで冒険に出るときのように私はドキドキしながらページをめくった。
 小説は、『宇宙が好き』という共通点を持つ幼馴染四人の楽しげなシーンから始まった。小さな科学館で繰り広げられる温かな日常。物語が動き出すのはそのあと。時を経て、科学館の館長の死をきっかけに、ばらばらになっていた四人が再び集まるところからだった。集まった四人はそれぞれ、後悔や苦しみを抱えながら、大人になろうとしている。細やかな風景描写で、私は登場人物たちとともにその町を見渡すことができた。丁寧な心理描写で、私は登場人物全員に感情移入をしていた。
 なかでも私が一番共感したのは四人の中の一人で、語り手の中の一人でもある理奈だ。理奈は宇宙が好きという四人の中でも一番専門的な知識を身につけ、今も『宇宙に関わる』という夢を追っていた。他の人から見れば、それは羨ましいこと。しかし、理奈自身は心の中で言っていた。


【夢にしがみついていたのが私だ】

 私はその言葉にびくりとした。まるで自分のことみたいだと思った。小さい頃から楽しそうだと夢見ていた芸能活動。それなのに、今の私は、苦しいことに耐えれば夢は叶うんだ、と我慢していることが沢山ありモヤモヤしていたのだ。勿論、夢を追うことに我慢は必要で、楽な道だけではないのは当然のこと。でも、私が芸能活動をしたいと思ったのは楽しそうだったからではなかったのか。私がしていたことは、理奈が言うように夢を叶えるためのことではなくて、ただしがみついているだけのことだったのかもしれない。私の心は、更にずっしりと重くなった。だけど、理奈は物語の最後で自信を失っていた自分を捨て、大好きだった星空とまた向き合い始めた。
 私もそんな理奈のようになりたいと思った。苦しいことを我慢しないと、と思う自分を捨てて。大好きなお仕事の為にもし大変なことがあっても、それを楽しめる自分になりたいと思った。それが本来の私の夢のはずだった。
ふと、理奈の言葉が蘇る。


【夢を見るのはやめて、夢を摑む】

 私だって、夢を摑みたい。…いや、摑めるはず。そう思ったら、気持ちがふっと軽くなるのを感じた。大好きなお仕事の為の我慢なら悪くない、寧ろ嬉しい気がする。
 理奈のおかげで、私の心の中をモヤモヤ漂っていた雲は消えて満天の星が広がった。心の中の星空を清々しく感じている。それはまるで冒険を終えた後のようだった(二度目になるが私は冒険なんてしたことがない)。
 あれだけ期待して読み始めたはずだった。しかしこの物語は私の期待をふわっと飛び越えて、更に背中を押してくれた。
 同い年。こんな素敵な物語をこの世に送り出してくれたその存在に、私は感謝を伝えたい。
 そして、私はまたペンをとるだろう。書き上げられないと知りながら。

――大友花恋(17歳・モデル/女優)

大友花恋(おおとも・かれん)
1999年10月9日生まれ。群馬県出身。 Seventeen 専属モデル。
公式ブログ:http://ameblo.jp/karen-ni-saku/
大友さんが出演する映画「君の膵臓を食べたい」は2017年7月28日全国ロードショー。
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