桜庭一樹 じごくゆきっ RENZABURO 各短編を、漫画家・イラストレーターがPOP化! 書店員が選ぶベスト1短編 試し読み実施!
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内容紹介
かわいいかわいい由美子ちゃんセンセ。こどもみたいな、ばかな大人。みんなの愛玩動物。
そんな由美子ちゃんの一言で、わたしと彼女は、退屈な放課後から逃げ出した。
あまずっぱじょっぱい、青春譚――「じごくゆきっ」。

ぼくのうつくしいユーノは、笑顔で、文句なく幸福そうだった。
あのときの彼女は、いまどこにいるんだろうか。
ユーノのお母さんの咆哮のような恐ろしい泣き声。
僕はユーノにも、その母親にも追い詰められていく――「ロボトミー」。

とある田舎町に暮らす、二人の中学生――虚弱な矢井田賢一と、巨漢の田中紗沙羅。
紗沙羅の電話口からは、いつも何かを咀嚼する大きくて鈍い音が聞こえてくる。
醜さを求める女子の奥底に眠る秘密とは――「脂肪遊戯」。

7編収録の短編集。
著者プロフィール
桜庭一樹(さくらば・かずき)

1999年「夜空に、満天の星」(『AD2015隔離都市 ロンリネス・ガーディアン』と改題)で第1回ファミ通エンタテインメント大賞に佳作入選。<GOSICK>シリーズ、『推定少女』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』などが高く評価され、注目を集める。2007年『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞、08年『私の男』で第138回直木賞を受賞。その他の著書に『少女には向かない職業』『荒野』『ファミリーポートレイト』『ばらばら死体の夜』『ほんとうの花を見せにきた』などがある。
試し読み・コメント
「書店員さんが選ぶ、『じごくゆきっ』私はこの短編が好きだ!大賞」


書店員さんが、7編のち、最も心に刺さった1編に投票!
最も支持を集めた「ロボトミー」を試し読み!

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書店員さんからコメント続々!

ダイハン書房 本店 山ノ上純さん
場合によっては<家族がいちばん恐ろしい>かもしれない。

大盛堂書店 稲坂梨奈さん
桜庭一樹が描く少女や少女性は、孤独で不安で、時に暴力的!
可愛いだけではない彼女たちの暗澹な世界はグッと読者を引き込んでしまう、不思議な魅力に溢れている。

有隣堂 伊勢佐木町本店 佐伯敦子さん
ストレス解消には、ハーゲンダッツとマリーのクッキー!(参照→『脂肪遊戯』)
ひさしぶりの桜庭一樹、やはりHard!面白かったです!

MARUZEN 名古屋本店 竹腰香里さん
色々なかたちの想いと愛がたっぷり詰まった珠玉の作品集です。
たとえ歪んでいようとも、後ろ向きでも、紛れもない「愛」の数々。
真っ黒なはずなのに、読み終わった後の爽快感。
まっすぐにひたすらに愛に突き進んでいるからでしょうか!?

七五書店 森 晴子さん
機能不全の人間関係の心の奥底を描き出し、「そういうの普通にあるんだよ、何とかしなきゃダメだけど、さぁどうする?」と自分に突きつけられた感じがしました。

浅野書店 岩立千賀子さん
10代が持つ特有の世界。それを桜庭一樹はよく知っている。
高校演劇でやってほしいなと思うのは私だけだろうか・・・・・・。

鹿島ブックセンター 鈴木順子さん
どんなに強く指をくっつけてても、そのわずかなスキマからスルっと幸せが逃げてしまった・・・・・・。
やるせない物語です。

三省堂書店 営業企画室 内田剛さん
善と悪、生と死、愛と憎しみ・・・・・・。あらゆる現象を超越し、神と人間をも同格化してしまう。
まさに猛毒であり鋭い凶器ともいえる一冊。最も恐ろしいのは、桜庭一樹である!

ジュンク堂書店 西宮店 水口真佐美さん
桜庭一樹サイコー!!
この世界観、たまらない!!

喜久屋書店 阿倍野店 市岡陽子さん
ドス黒さ、半端なーーい!その中でも「じごくゆきっ」は、私自身の裏の顔にも通じる親近感がありました。あぁ、逃亡したい・・・。

啓文社 西条店 三島政幸さん
女の子のふわふわした時期を描かせると、桜庭一樹は巧いなぁと思いました。

精文館書店 中島新町店 久田かおりさん
ひとつひとつの物語が生温かでぬめぬめとした甘さでもって絡みついてくる気持ち悪さ。甘い気持ち悪さ。
「なんかいやだなぁ、この人たち、なんかすごく変だし気持ち悪いしいやだいやだ」と思っているはずなのに、なんとも離れがたい。
私はやはり『脂肪遊戯』ですね。
翡翠のピュアさもニノの哀しさも捨てがたいですけど、やはり脂肪を身にまとうことで必死に自分を守っていた紗沙羅と、無自覚にも紗沙羅を守って来た賢一の「愛情」に心惹かれました。
あぁでも、やっぱりユーノの母親の狂気こそこの物語たちの頂点かも。(『ロボトミー』 )
POPギャラリー
各短編を、漫画家・イラストレーターがPOP化!

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「暴君」 まがた作
巨漢の・田中紗沙羅と、その親友・金堂翡翠。そして男子の三雲陸。中学一年生。これはあたしたち三人のひと夏のカミュと出刃包丁とお化け屋敷をめぐる物語。ある日、翡翠が三雲の家の前を通りかかると、うめき声が。玄関にあがり恐る恐る部屋に入ると、そこには腹に出刃包丁を刺した陸がいた――。
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』後日談
「ビザール」 奥田亜紀子作
25歳。学生気分のままではいられない年頃。カノは転職先では笑顔の仮面をかぶり、ツイッターの中だけで素顔を見せる……。上司の更田(サラダ)に目をつけられてから、カノは男性との付き合い方を考え始めるが――。

「A」 けーしん作
わたくしことAはかつて、この国のアイコンであった――。「アイドル」という言葉が使われていた時代、誰もが魅了された国民的少女がいた。過去の遺産を復活させようとする二人の男が登場し、再びアイコンが蘇る――。
「ロボトミー」 conix作
ぼくのうつくしいユーノは、笑顔で、文句なく幸福そうだった。あのときの彼女は、いまどこにいるんだろうか。ユーノのお母さんの咆哮のような恐ろしい泣き声。僕はユーノにも、その母親にも追い詰められていく――。

「じごくゆきっ」 田中寛崇作
かわいいかわいい由美子ちゃんセンセ。こどもみたいな、ばかな大人。みんなの愛玩動物。そんな由美子ちゃんの一言で、わたしと彼女は、退屈な放課後から逃げ出した。あまずっぱじょっぱい、青春譚――。
「ゴッドレス」 さらちよみ作
子供のころ、うつくしい父親は娘にとって唯一の神様だった。「君たちは結婚するんだ」と父と同性の恋人を紹介された娘は――。

「脂肪遊戯」 早川世詩男作
とある田舎町に暮らす、二人の中学生――虚弱な矢井田賢一と、巨漢の田中紗沙羅。紗沙羅の電話口からは、いつも何かを咀嚼する大きくて鈍い音が聞こえてくる。醜さを求める女子の奥底に眠る秘密とは――。
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』後日談

著者エッセイ
天国に着きそうなっ

 西日本にも雪が降るってことを知らない人は案外多い。
 女友達が昔、冬の最中に大失恋し、「こうなったら鳥取砂丘で砂に埋もれて泣いてやるっ」と各駅列車でコトコトコトコト旅をしたという。だがようやく着いたところ、砂丘は雪に埋もれており、「って……これじゃ普通の雪野原じゃねーか!」となった。
 短編「じごくゆきっ」は、このことをふと思い出し、書いた。女教師と女子高生が真冬の砂丘へととつぜん駆け落ちするお話である。駆け落ちとはじごくゆきっ。しかし雪が積もっていて……。
 そういえば、今年の初め、べつの女性からも「砂丘に一人でたたずんでやろうと思って鳥取に行ったら雪で埋もれてやがりましたよ。蟹食べて帰りましたよ」と言われた。よくあることなのかもしれない。
 あとそれから、生徒より子供っぽい不思議な女教師の造形は、『あずまんが大王』(あずまきよひこ著)を読んでいて思いつきました。
「ビザール」「ロボトミー」「ゴッドレス」の三本は、〝脳と視覚のあいだに起こるイレギュラーな病〞に強い興味を持って書き始めた。
「ビザール」には、脳のバグによって過去の記憶が異常に鮮明になり、まるで映像を再生するように幾らでも思いだせるようになる症状が出てくる。「ロボトミー」には、記憶がある一定の時間しかもたなくなってしまう症状が。「ゴッドレス」には、目の前で過去のとあるシーンが視覚としてひたすら繰り返されて止まらなくなってしまう症状が。
 興味を持ったきっかけは、脳と視覚の間にいろんなドラマがあることを知ったからだった。たとえば、人の視覚が欠け始めると、脳が勝手に見えているふりをしてへんな補正をしだす。その映像の中には、この世にあるはずのない変なものが混ざったりするらしい。だから、視覚が欠けている人は、幻や幽霊、過去、未来などをよく視るのではないか、と。
 さて、「暴君」「脂肪遊戯」は、井上雅彦氏が編纂するアンソロジー集「異形コレクション」シリーズに寄稿したものだ。
 そのすこし前に『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(富士見ミステリー文庫)を出したのだが、(後に売れ出してくれたものの)初速はあまりよくなかった。こういうダークな作風のものはもう出せないということになり、いや、でも書きたい、どこかに書ける場所はないか、とウロウロしていた。幸い井上氏にお声掛けいただき、『砂糖菓子〜』と同じ世界を舞台にしてこの二本の短編を書いた。確か同じころに『少女には向かない職業』(創元推理文庫)も執筆したと思う。
 その後、忙しくなってしまい、「異形コレクション」への参加は短編二本で終わった。だが〝友達の母親の死体がへんな風にみつかる〞というエピソードをどうするつもりだったかは、なぜかいまも鮮明に覚えている。
 母親は竹林で死に、しばらく誰にもみつけてもらえなかった。春になって地面からタケノコが何本も出てきて、死体を突き破り、空に向かってにょきにょき伸びて竹になった。夏になり、竹林にきた人が上を見上げたら、白骨死体が飛んでるように見えたという、アクロバティックかつスラップスティックな発見のされ方をする……。
 いまだに、すごくいいと思う。
 最後の「A」は、SFの短編という依頼だったので、「えっ……。SFか……。書けるかな。ううーん!!!」と一日半ぐらい悩みこんだ。そして、当時人気絶頂だったアイドル松浦亜弥のイメージと、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの短編「接続された女」を合体させて〝不滅のアイドルの死〞を書いた。
 こちらは、天国に着きそうなお話であります。


「青春と読書」2017年6月号再掲
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