『他人事(ヒトゴト)』平山夢明
定価:1,600円(本体)+税 10月26日発売
この本は「残酷な話を他人事として読みたい」人が手に取っても、充分その期待を裏切らないでしょうし、そう読まれる方も多いと思われます。しかし「残酷な話を他人事として愉しめない」人がこの本を手にすれば、この本の真髄にある「恐怖」に触れる事が出来るかもしれません。
なぜならそういう人は、ここに描かれた残酷さ以上に、その軽さにこそ苛立つだろうからです。集められた無意味に残酷な14の短編は、それにふさわしいだけの深刻さを持つことなく、どれも軽快に流れていってしまいます。
ここに著者自身の言葉を引用します。
――恐怖とは何かと考えていた。確たる答えは見つからず、迷路に呆然と立ち尽くしていた時、最も怖ろしい出来事は常に新聞記事に在ることに気がついた。この世が孕む虚無や無関心こそ恐怖の豊潤な源泉だと気づいたのです。――
(『青春と読書』11月号「著者の言葉」より)
(編集T)