『桃山ビート・トライブ』天野純希
定価:1,400円(本体)+税 1月5日発売
安土桃山時代。豊臣秀吉、秀次、石田三成、出雲のお国。
言わずもがな、歴史上の超有名人ですが、本作の主人公は彼らではありません。
京の五条河原に突如現れた若者4人組・・・出雲のお国一座出身の笛役者、鋭い撥さばきの三味線弾き、大胆なステップを踏む踊り子の少女、そして何より人目を引くのが、黒く光る肌を持った太鼓叩きの弥介。伝統を無視した斬新な演奏と、反体制的言動が、あれよあれよという間に、民衆の心をわしづかみにしていき、超人気一座に上り詰めます。
ライブ(と言っていいでしょう)で聴衆は総立ち、小屋(ライブハウス、ですね)は熱気に包まれ・・・そう、桃山版ロックバンドの誕生です。
ここまででも十分楽しめるのですが、若者たちのサクセスストーリーで終わるのではありません。やがて彼らは期せずして、三成、秀次らの政争に巻き込まれ・・・と、ここからがこの物語の本番。詳しくは中を読んでくださいとしか言えませんが、なにせ、ロッカーですからね、反体制なのですよ。戦います。武器は、刀でも銃でもなく、もちろん音と踊り。
読み手はページを繰る手を止めることができないグルーヴ感の中で、<喜怒哀楽>の波にもまれながら読了することになるでしょう。
佐藤賢一、村山由佳、荻原浩、三崎亜記など、毎年、個性豊かな新人作家を送り出す小説すばる新人賞、2007年の受賞作である本作も、錚々たる歴代受賞者に負けていません。
こんな時代小説、読んだことなかった。
誰もがそう思い、二作目をすでに期待してしまうはず。
大丈夫ですよ、すでに次作の構想もあります。
期待にたがわぬ作品を皆様にぶつけますので、ご覚悟あれ。
(編集K)