『鬼』今邑彩
定価:1,400円(本体)+税 2月26日発売
家の中のあちこちに、気づけば紛れ込んでいる誰のものでもない髪の毛。
ふとした瞬間に、不敵な笑みを浮かべるようになった家族。
いつからか見るようになった、自分が誰かを埋めている夢……。
本当は、なんでもないのかもしれない。
考えすぎなのかもしれない。
でもやっぱり、何かがおかしい。
そんな、日常に浸食してくる奇妙な怖さを描いた短編集です。
でも、ホラー100パーセントを想像していると、その期待は裏切られるはずです。これがまた、「人間とはかくも恐ろしいものなのか」と薄ら寒くなるような展開なのです。
つまりは、あの世のもの(幽霊とかそういうもの)が起こすことと、人間の“思い”が引き起こすこと、いったいどちらが怖いのか、ということですね。
この、どうも後ろが気になり出すような、“いや~な感じ”の裏には、誰かの思惑が働いているのかもしれない、もしかすると、目の前にいるこの人が何かしているのかもしれない、そうやって一度不信感を覚えてしまったら、もう途端にすべてを疑いたくなるような、そんな怖さです。
あなたも用心してください。
一見穏やかな日常が、既に少しずつ奇妙な世界へと姿を変えているかもしれません。
そうやってあなたの隣でにこにこしている、その人が、何か企んでいるかもしれません。
ホラーは苦手で、お化け屋敷に入っても最初から最後まで目と耳を塞いでいるような私も、思わず夢中でページを繰るほど、やめられない面白さでした(怖いもの見たさとは、まさにこのことだと実感)。人気テレビドラマ「世にも奇妙な物語」ファン(某・販売スタッフ)もはまった、まだまだ寒い初春の夜にふさわしい(?)一冊です!
(編集W)