『ハナシがはずむ!/笑酔亭梅寿謎解噺 3』田中啓文
定価:1,800円(本体)+税 5月26日発売
師とは、かくあるべきもの・・!?
上方落語の師匠・梅寿(ばいじゅ)の元に弟子入りした金髪の不良少年・竜二が、様々な事件に巻き込まれ、酔いどれ師匠に(注:この梅寿師匠は一日20時間くらいは酩酊している)嫌というほどどつかれながらも日々たくましくサバイブし落語の腕を上げていく、青春落語小説。人気シリーズの第3弾だ。
もちろん、落語のネタと上手く絡んだ謎解きを楽しめたり、東京の落語とはまた別の上方落語というものを知ることができたり、といった本筋の旨みはたっぷりあるのだが、何よりの見所はやはり師弟愛(!?)だと第3弾を読んで改めて実感。
梅寿の弟子教育はどこまでも激しく凄まじく、意味不明に暴力的。そんな物で殴ったらいくら竜二とはいえ死んじゃうよ、借金がかさんで大変なのにこんなに家のあちこちを破壊しまくって大丈夫なんだろうか、あぁまた電話投げちゃって使えなくなっちゃうよ……とヒヤヒヤする。
だがしかし、そんな我が子を崖から突き落とすような猛獣的(盲従的?)な師弟関係にも、しっかり愛は存在するのだ。落語という芸に惚れこんだ二人の宿命、とも言えるかもしれないが、ただそれだけではない“絆”が確かに育っている。
第3弾はそんな“絆”が試されるようなとんでもない騒動が勃発するのだ。
ちなみに著者の田中啓文さんは梅寿のような酔いどれ激烈作家、では全くなく、極めて温厚ないい方なのですが、この第3弾の最終話で大詰めの時に、ある有名落語家のお墓参りをしようとして崖から落ち全身打撲を負ったそうです。まるで竜二のようなひどい目に遭ったのは何かの因縁!?
(編集W)