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右岸

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『右岸』辻仁成

定価:1,700円(本体)+税 10月15日発売

辻仁成さんと江國香織さんのコラボレーションです。
『冷静と情熱のあいだ』から10年、二度目のタッグです。
こんなことってめったにないですよ。
だって、コラボレーションって大変なんですから。
小説を書くことは、一人の作家が自分の頭の中で完結した世界を作り上げていく
という、とても孤独で厳しい作業です。
そのかわり、すべてを一人で決められるという自由がある。
一方、登場人物やモチーフ、舞台を共有して別々の作品を作り上げていくという
コラボレーションは、その自由が制限されます。
小説が本来持つ自由さをある程度捨ててまで、
あえてコラボレーションにこだわって生まれた作品、それが『右岸』と『左岸』です。

なんでコラボなのか? この疑問には辻さんはこう答えると思います。
「コラボって面倒なところはあるけど、絶対面白そうじゃん」。
ミュージシャンでもあり、映画も作る辻さんは、
常に外に向かって誰かと切り結んでいたい、
そのことが新しいものを生み出すんだ、そういう確信を持って
創作にチャレンジしている稀有な作家なのです。

そんな辻さんが渾身の力を込めて書きあげた『右岸』。
「すばる」で6年に及ぶ長期にわたっての連載でしたが、
辻さんは、単行本にするにあたって、大幅に加筆と訂正を加えました。
辻さんいわく、「連載の途中から、九(主人公ね)が立派になりすぎちゃったんだよ」
そう、九ちゃん(主人公だよ)は、普通に考えれば、
スーパーヒーローになってもおかしくないような不思議な力を持った少年なのです。
ところがそうならない。どこか愚直で不器用で、
大好きな幼なじみの茉莉にもうまく思いは伝えられないし、
周囲の人を幸せにできなくてずっと悩んでいたりする。
そういう九のダメダメぶりこそ、みんなに読んで欲しい、
そこから何かを感じてくれたら、と、辻さんは大胆な改稿を施したのです。

そうそう、コラボの面白さを垣間見せるこんなこんなエピソードがあります。
「僕の友だちに、小学校の時、用務員室で育ったヤツがいるんだよ」
「それって小説になりそう」
これは、連載が始まる前に、辻さんと江國さんの間でなされた会話。
これが、どんな風に小説に描かれたのか? それは読んでのお楽しみです。
ちなみに、この辻さんの友人は、
『右岸』『左岸』の素晴らしい装幀を担当した新妻さん。
いろんな人たちが関わったこのコラボレーション小説の傑作、必読ですよ。
(編集A)


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