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担当編集のテマエミソ新刊案内

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左岸

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『左岸』江國香織

定価:1,700円(本体)+税 10月15日発売

『冷静と情熱のあいだ』から10年。辻仁成さんと競作が再びの登場です。
『左岸』は、対をなす辻さんの『右岸』とともに「すばる」で6年間連載されました。
兄のことと、踊ることが大好きな茉莉が主人公です。
仲の良い両親、聡明な兄、同い年の幼なじみ九に囲まれ、
幸せな幼少時代を過ごしましたが、兄にまつわる事件をきっかけに、
彼女を取り囲む風景は様変わりします。
それでも、感性のままに行動し、果敢に恋に落ちる茉莉。
高校生のときに駆け落ちしたのを最初に、
さまざまな男性との出会いと別れを経験します。
不器用だけれど、真摯に愛にむきあう茉莉の姿がほんっとうに胸をうちます。

そんなある女の「半生」を描ききった大長編ゆえに、
装丁を決める作業は難航しました。
辻さんの『右岸』と対になる感じで、とはいえ、それぞれに独立した雰囲気も出したい……。一度、ある画家の抽象画を使う方向で舵をきったのですが、
「なんか違う」という結論に。
困りきった『右岸』『左岸』の担当者ふたりは、辻さん、江國さんに相談に行きました。
辻さんからの「大河」のイメージという言葉を頼りに、写真集、画集をかき集めて……。
1冊、1冊をみてもらいながら、みんなでイメージをふくらませてゆきました。
刻々とすぎてゆく時間、「今日は決まらないかも。発売延期か…!?」
と不安になったとき、辻さん、江國さんが同時に「これいい!」と叫んでくださったのが、
写真家・澁谷征司氏の写真集『BIRTH』でした。

『右岸』の写真は静謐な川の風景。鏡のように風景を写し取る水面が不思議で、
なんとも幻想的です。
『左岸』の写真はぬくもりを感じさせる海の風景。
楽しげに動く人々を「遠く」に見つめる感じが、
すこし孤独で、独特の雰囲気があります。
(ふたつとも違う形の「天国」の風景みたいですよね……。『左岸』は「川じゃないじゃん!」というツッコミが入りそうですが、川は海に流れつくということで、いいのです!)

おふたりの壮大な人生の物語にふさわしく、
辻さん、江國さんの雰囲気にもあっています。
すぐさま、写真家の澁谷さんに許可をいただき、装幀家の新妻久典さんの力で、
すばらしい装丁となりました。
小説に酔いしれたあと、しみじみカバーを見ていただければ、とてもうれしいです。
(編集N)


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