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堀田善衞上海日記

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『堀田善衞上海日記』堀田善衞

定価:2,300円(本体)+税 11月5日発売

「堀田さんは海原に屹立している巌のような方だった。
潮に流されて、自分の位置が判らなくなった時、
ぼくは何度も堀田さんにたすけられた」

これは、スタジオジブリの宮崎駿監督の言葉です。
宮崎さんがもっとも敬愛する作家が、この『日記』の著者・堀田善衞さんでした。

堀田善衞さんは1998年に80歳で亡くなった作家です。
どんな作家だったかということは、ここではとても説明し切れないので、
ぜひ、ネットなどで調べてみてください。
宮崎駿監督のアニメ作品には、どこかに堀田さんの著作の影響が
刻印されているような気が僕はしています。
一番は『もののけ姫』かな。『ナウシカ』にもあるような気がするんだけど……。
没後10年の今年、神奈川近代文学館で、『堀田善衞展』が開催されました
(11/24まで開催)。
この展覧会にスタジオジブリは全面的に協力していて、
『ゲド戦記』の宮崎吾朗監督が、堀田さんの作品をアニメにしたならどうなるだろう、
というテーマの展示もありました。
この展覧会で、堀田さんが、1945年3月から46年12月まで
上海に滞在していたときの日記が、初めて公開されました。
その日記を全て収録したのが、この『堀田善衞上海日記』です。

45年8月、堀田さんは上海で日本の敗戦を迎えました。
当時、堀田さんは27歳の青年でした。
異国の地での敗戦体験がどのようなものだったか、
未来が全く見えない状況のなかで、一人の青年が何を考え、
どのような行動をしたかが、この日記には、克明に記されています。
そして、この日記に記された思索の軌跡が、
現代の激動する世界を考えるための示唆に満ち満ちていることに、
本当に驚かされます。
どうして、弱冠27歳の青年が、ここまで深く、
自分と世界のことを考えることができたのか? 
敗戦という我々には経験できない切迫した状況下であるということを割り引いても、
この思索の鋭さ・深さはすごい。
自分が27歳の時とのあまりの落差に、本当にショックを受けてしまいました。
一方で、この日記には、堀田青年の切ない恋愛の様子も、克明に描かれています。
上海で出会い恋に落ちた女性は、すでに結婚している人でした。
そして堀田さん自身も、日本に妻子を残していたのです。
まるで映画みたいなこの二人の恋愛模様は、
この日記をとても陰影の深いものにしています。
後に、国際的な視野を持った優れた作家と評された堀田善衞も、
恋の前では僕らと同じ、クヨクヨ悩み、オロオロ行動する一人の青年なのでした。
思索はだめでも、恋なら僕にもできるよな、と考えたいところですが、
日記を読んでそう思えるかどうか、ぜひ手に取ってみてください。
(編集H.A)


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