『廃墟建築士』三崎亜記
定価:1,300円(本体)+税 1月26日発売
廃墟建築士。つまり「廃墟」を「建築」する専門家のことです。
ん? 何それ。それってオカシイんじゃないの!?
そんな声が聞こえてきそうです。確かに、私たちの世界ではそんな職業はありえません。
でも、どんなことでも起こりうるのが三崎亜記の世界なのです。
廃墟を新築したり、建物の七階だけを撤去したり、図書館に“野性”があったり、蔵に意識があったり――今まで見たことも聞いたこともないような現象が、当たり前のように受け入れられているのです。
でもよく考えると、私たちが生きている世界だっておかしなことがいっぱいあります。
誰が使うのか、本当に必要なのか分からない建物や道路がどんどん造られていますが、これってちょっと見方を変えれば、数十年後に廃墟として“熟成”する建物を建てている……とも言えると思いませんか?
「おかしなこと」と「当たり前のこと」の境界線って、意外と、そんなにはっきりあるわけじゃないよなあと思うのです。
この本は、「七階闘争」「廃墟建築士」「図書館」「蔵守」という、建物がテーマの中篇4本を収録した作品集です。
自分の住むマンションの七階を守るため、廃墟文化の繁栄のため、“本の調教”という職務を全うするため、蔵守としてのプライドのため――人々はそれぞれの理由で何かを守ろうとしています。
理由も仕組みもわからないというのに、不思議な現象を受け入れ、その中であがく人々。その姿は、読む人によって、ユーモラスだったり、不気味だったり、あるいは切なかったり、さまざまな印象を受けると思います。
楽しむのも、不思議な気持ちになるのも、すべてあなた次第。
ぜひ、この不思議な三崎ワールドにお越しください!
そうそう。
短編集『バスジャック』収録の「動物園」のヒロイン、日野原柚月さんも再登場します。
社長との関係はどうなっているのでしょうか。ぜひお手にとって、読んでみてください。
(編集H)