『鳳凰の黙示録』荒山徹
定価:1,500円(本体)+税 7月3日発売
荒山徹、という作家をご存知でしょうか。
新聞記者時代に在日コリアンの問題を取材したことがきっかけで大韓民国に関心を持ち、言葉を学ぶだけでなく、後日留学までしてしまったという大変なパッションの持ち主です。
そんな彼が書いた小説『鳳凰の黙示録』とは?
日韓両国の歴史を自由奔放に行き来しつつ、新たに一つの歴史世界を作り上げた時代小説です。
そして、歴史・伝奇小説・特撮アクションへの愛情をベースに遊び心のスパイスを利かせた、熱くハイテンションなエンターテイメント小説なのです!
時は1614年。建国以来、王座を巡っての骨肉の争いが絶えない李氏朝鮮王朝で、無辜の王子が非道な王によって殺されようとします。それを見かねた女剣士集団“琴七剣”は、王が放った刺客集団“魔別抄”と戦うことに。ここからヒロイン・碧蓮の苦難が始まります。
それにしても、この敵たちが皆ムチャクチャなのですよ!
相手の殺意を跳ね返す瞳術使いの権妃、伝説の大怪獣を操る火炎獣伯、人を食らう虎頭人身の虎貌卿婁伯などなど、とにかく化け物っぷりも見事な十人がさまざまな技を繰り出してくるのです。蝙蝠だの大蛇だの、よくもまあここまでと思うような敵の造型は、著者がこよなく愛する特撮へのオマージュなのかもしれません。
こんな化け物たちと戦うことになる琴碧蓮ですが、同時に運命の相手とも遭遇します。
若き剣士・壮一鴻。実は彼は琴一族の宿敵です。
そう、<ロミオとジュリエット>なのです!
碧蓮は彼を憎みつつも惹かれ、警戒しつつも共闘し、物語の後半の舞台は大坂冬の陣直前の日本へと移ります。
韓国編がアクションとキャラクターで見せるエンターテイメントとすると、日本編は歴史小説の面白さ全開です。碧蓮はずっと「鳳凰卵の鍵」と王子の命を護るために戦ってきたわけですが、そもそも鳳凰卵とは何なのか? ここで荒山式東北アジア史が開陳されます。
聖徳太子、天智天皇、倭寇、信長、秀吉、家康、大坂の陣、明治維新など、日本史上の大きな変化にはいつもこの鳳凰卵と鳳凰卵の鍵をめぐる争いが関わっていたのだと。
「○○が実は△△だった。おお、そうか!」と目からウロコが落ちるといいますか、見事に騙される快感が歴史小説の愉しみなのではないかと個人的には思っているのですが、荒山さんの小説ではまさにそれが心ゆくまで味わえます。
思いっきり広げられたこの大風呂敷に乗っかって、剣術妖術因縁愛憎が渦巻く<荒山式時代エンターテイメント小説>の世界をお楽しみいただければ幸いです!
(編集H)