『宵山万華鏡』森見登美彦
定価:1,300円(本体)+税 7月3日発売
今や<京都を代表する作家>といっても過言ではない著者が、この夏、満を持して贈る<京都を代表する祭り>のお話です。
タイトルの「宵山」とは、山鉾巡業の前夜、祇園祭の中で最も盛り上がる夜のこと。この夜を舞台に、6つの物語が展開します。ゾッとする話、愉快かつ痛快な青春もの、しんみり温かい話など多彩な6篇は、どれもちょっとずつ重なっていて、ちょっとずつズレています。くるくる回る万華鏡を覗いているように、様々な人びとやモノたちが入り乱れ、不思議な夜の絵図を形作っていくのです。
あれれ、現実はいったいどれ?
この人、本当はどんな人なの?
たくさん疑問が湧いてきますが、そこが森見ファンタジーの素敵なところ。
私たちの日常でも、わからないことは不安だし、理解できない人や物事に悩むことがあるはずです。でも、そんな日常がちょっぴりズレたら、あんなこともこんなこともあり得る。いま自分が直面している現実のウラには、全く別の現実があるのかもしれない。そう考えると、なんだか気持ちがラクになりませんか?
本の中には、この「ズレ」を自力で演出しようと、一見馬鹿げたことに全力を傾ける乙川という人物が登場します。「こんなことをして何の意味があるの?」という質問に、彼は「意味はない」と答え、こう続けます。
「でも、頭の天窓が開いただろう?」
ぜひこの本を読んで、頭の天窓をパカッと開くシアワセを、味わってみてください。
(編集N)