『太陽のパスタ、豆のスープ』宮下奈都
定価:1,400円(本体)+税 1月26日発売
「やりたいことや、楽しそうなこと、ほしいもの、すべて書き出してごらん」
そう言われたら、あなたは何を書きますか?
いま最も新作が楽しみにされている作家のひとり、宮下奈都さんの最新刊は、「リスト」の物語です。冒頭のセリフは、婚約者に突然結婚を取りやめたいと言われ、茫然自失となった主人公・明日羽(あすわ)に、叔母のロッカさんがかけた言葉。溺れる者が掴むワラのように、暗闇をさまよう明日羽の道しるべとなる、「ドリフターズ・リスト(漂流者のリスト)」だと言うのです。
今日一日でやることから、休みの間に観たい映画、今年の目標、旅行してみたい場所、会ってみたい有名人、生きているうちに叶えたい夢まで……「リスト」に書かれることは大小さまざま、そして実現する可能性もまちまちです。冒頭の問いかけにこたえて書かれたリストは、きっと十人十色でしょう。逆にいえば、「その人がどんなリストを作るのか、そしてそれをどうやって消化していくのか。それだけで、その人のことが見えてくる……」。実は、この物語は宮下さんのそんな言葉から始まったのでした。
「自分にはもうなんにもない」と立ち止まってしまった明日羽に、リストは再び歩み始めるきっかけをもたらすと同時に、時には足を止めさせ、悩ませる原因にも……。「そもそも、自分が本当にやりたいことってなんだろう?」と。
しかし、このリスト作りを足がかりに、彼女はある確かな一歩を踏み出します。
読むと、自分でもリストを作りたくなるはずです。私ももちろん、作ってみました。実行できたもの、できなかったもの、いろいろあったはずなのですが……正直、最初のリストの項目をあまり覚えていません(笑)。きっと、リストを作ること自体が楽しいんですね。そこに何か、この物語の、そして人生の、ヒントがあるような気がします。
「自分はこのままでいいのかな」「何かが足りない気がする」と悩んでいる方にも是非オススメしたい一冊。今のあなたが必要としている本はきっとこれです!
(編集W)