『光媒の花』道尾秀介
定価:1,400円(本体)+税 3月26日発売
人間の強さと弱さ、そして優しさを描いた、傑作群像劇
『向日葵の咲かない夏』が2009年で最も売れた文庫(オリコン調べ)となるなど、目覚ましい快進撃を見せる道尾秀介さん。このたび、ファン待望の最新作が発売を迎えました。
この『光媒の花』は、第1章の脇役が第2章の主人公に、そして第2章の脇役が第3章の主人公に……と変わりながら全てが繋がっていく、連作群像劇です。
認知症の母親とひっそり暮らす中年男性、ホームレス殺害に手を染めた小学生兄妹、幼い恋の疼きに駆られた少年、ある出来事を機に耳が聴こえなくなった少女、父が亡くなって以来母を憎み続ける青年、自信を失った女性教師など……彼らがつかなければならなかった嘘は、人生の景色を大きく変えてしまいます。
苦しくて切なくて哀しくて、やりきれない。そんな物語に後半、思わぬ光がきざし、ラストで私たち読者は“ある確かな人生の真実”を目の当たりにします。
「小説を読んで、こんな気持ちになるのか」
そう私たちに思わせるために、道尾さんはこの作品を書かれたのではないかと私は思います。
言葉で説明しては台無しになってしまうくらい、素晴らしい作品です。読んでいただければ、必ずわかると思います。是非、ぜひ、お読みいただきたいです。
最後に、2年という長いスパンをかけ書き上げたこの作品に、道尾さんが寄せた言葉を紹介します。
「蝶は毎日決まって同じルートを飛び、それを「蝶道」と呼ぶのだそうです。
全六章のこの連作では、ある一匹の蝶が見た六つの景色を描いています。
この全六章を書けただけでも、僕は作家になってよかったと思います。」
(編集W)