『終わらざる夏(上)(下)』浅田次郎
上巻 定価:1,700円(本体)+税・下巻 定価:1,700円(本体)+税 7月5日発売
第二次世界大戦はいつ終わったのでしょう?
こう質問されたら、ほとんどの日本人は
「1945年8月15日」と答えると思います。
そうです、日本の敗戦が、玉音放送で全国に伝えられました。
ところが、その玉音放送後に、始まった戦闘があったのです。
北のさいはての島で、日本軍の超精鋭部隊とソ連軍が、壮絶な戦車戦を繰り広げていた。
恥ずかしながら、編集Nもこのことを知りませんでした。
本作は、この「終わったはずの戦争」を題材に、戦争という大きな理不尽に巻き込まれ、懸命に生きた人びとの姿を描いた長編小説です。
兵役年限ぎりぎりの老齢で召集された、アメリカ文化に憧れる翻訳書編集者・片岡。
歴戦の軍神とまつりあげられ、ありえない4度目の召集を受けた盛岡のタクシー運転手・鬼熊。
周囲の人望厚く、志高い帝大医学生・菊地。
終戦間際に召集された彼らは、ある使命を帯びて北千島の孤島・占守島に向かいます。
かつてはクリル・アイヌたちが暮らし、海の幸豊かで夏には花々の咲き乱れる美しい島、占守島。
そこには、日本軍の精鋭部隊が、奇跡的に残されていたのでした……。
東京、信州、盛岡、北千島を主な舞台に、様々な立場の人々が、戦争に巻き込まれていく。
大本営で召集のおおもとを決めるエリートも、赤紙を届ける役場の担当も、それを受け取る一般市民も、最前線の兵士も、女子挺身隊の少女たちも、疎開先の先生(訓導)も、ロシア人の兵士も、皆、いまの私たちと変わらない、夢をもった人間だった。
そんな当たり前のことが、改めて胸に迫ってきます。
編集Nは、何度も何度も、涙で文字が読めなくなりました。
戦争、といって思い浮かべがちな通りいっぺんのイメージを、本作は根底から覆します。
そうしなくては、あの戦争の本質、そしてもっと大切なことは見えてこないと、浅田先生は仰っています。
人間が生きていくうえで、これだけは譲ってはいけない大切なこととは何か。
終戦65周年のこの年に、この作品を通じて浅田先生が世に問うているのは、このことなのだと思います。
ぜひともぜひとも、世代を超えてたくさんの人に読んでいただきたい、素晴らしい作品です!!
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(編集N)