『おとぎのかけら 新釈西洋童話集』千早茜
定価:1,400円(本体)+税 8月26日発売
昨年、デビュー作『魚神(いおがみ)』で史上最年少での泉鏡花文学賞受賞という快挙を成し遂げた千早さん。
耽美で幻想的、美しい毒をはらんだ独自の世界は、とても新人とは思えません。
待望の第2作は、シンデレラや白雪姫など、誰もが知っている西洋童話を題材にした短篇集。
ご本人も一見はんなりとした女性なので、昔から好きだったお姫様がモチーフになったりするのかしら……
と思ったら大間違い!!
打合せの開口一番、「西洋童話はキライです」と断言。
赤ずきんが狼に食べられたのは自業自得だし、白雪姫なんてすごい嫌な女じゃないですか……と、幼い頃から馴染めなかったのだそうです。
けれど、きっとこうした物語の根底には、何かしら読み継がれる理由があるはず。
それじゃあ、現代の主人公に置き換えて、その「核」を探ってみよう。
そんなふうにして、この作品が生まれました。
育児放棄された幼い兄妹、不倫に悩み実家に戻った三十路の女、過去に固執するフリーターの青年……。
登場する7人の主人公たちは、今の日本にきっといるであろう人ばかり。
読み進めるうち、遠い国のおとぎ話が、鮮烈な色彩と匂いを放ちながら、目の前によみがえってきます。
編集Nのオススメは、「美しくあろうと努力している時点で美しくない」等と容赦なく女性をぶった切る白雪姫が主人公の「カドミウム・レッド」。
あふれ出す女子の毒、ここまでくるとむしろ痛快です。
ぜひ、昔読んだ絵本を片手に、この本を開いてみてください。
(編集N)