『淡雪記』著者:馳星周
定価:1,800円(本体)+税 2月25日発売
少年ネロと愛犬パトラッシュの物語。
おそらく誰もが観たことのあるだろう世界名作劇場というアニメシリーズの『フランダースの犬』。
15年間前に『不夜城』でデビューし、数々のノワール小説を書き続けてきた作家・馳星周の原点がこのアニメだったと聞いたら、信じられないと思う人はきっと多いはず。
でも、これが真実。馳さんは言います。
「『アルプスの少女ハイジ』のクララが最後に立って歩けたように、努力すれば夢は叶うんだという世界に囲まれて僕は、少年時代を過ごしてきた。だから当然、ネロとパトラッシュも幸せになるんだろうと信じて疑わず、毎週楽しみに観ていた。ところが、最後、ネロが"パトラッシュ、ぼく、もう疲れたよ"といって、ルーベンスの絵の前で死んでしまい、パトラッシュもあとを追うわけです。あまりのショックに次の『母をたずねて三千里』は観られなかった(笑)」
馳少年に与えたインパクトは強烈だった。
「努力すれば夢が叶うという言葉の薄っぺらさ加減、努力しても報われない人生がこの世の中にがたくさんあると思い知らされたわけです。これが僕の作風の原点になっている」
というわけで、『淡雪記』です。
この作品は、馳星周版『フランダースの犬』。つまり馳ノワールの原点的作品であるわけです。
ファンのみならず、なんだかとっても気になりますよね。
舞台は馳さんの故郷近く、函館・大沼の別荘地。カメラマン志望の少年と知的障害のある美少女が運命的な出逢いをするところから、物語は始まります。徐々にふたりが背負ってる過去が明かされ、ラスト……。
これ以上、ネタばらしはできません。でも涙なくは読めません。
原点であるのに、新境地。妙な言い回しではありますが、そんな新たな馳ノワールが繰り広げられています。ぜひぜひ、ご一読を!!
(編集EJ)