『はとの神様』著者:関口尚
定価:1,500円(本体)+税 4月5日発売
デビュー時から、悩み多き年代である少年、青年たちの、
こまやかな心理を描きつづけている関口尚さん。
この作品にも、学校や家庭で、「人と違う自分」を自覚し悩む、
二人の少年と一人の少女が登場します。
舞台は80年代半ばの郊外の街。小学5年生のみなとは転校生。
学校に馴染めず、家庭では潔癖症の継母につらくあたられる日々。
みなとの同級生の悟は、クラスの誰よりも物知りなのに、
どこか周囲から浮き上がってしまう自分を感じています。この二人が、
一羽の「レース鳩」をきっかけにして、オランダ人の父を持つ少女・ユリカと出会います。
「レース鳩」とは…? この作品は、「鳩レース」が重要なモチーフになっています。
鳩レースとは、「鳩の帰巣本能を利用し、スタート地点である放鳩(ほうきゅう)地から
ゴールである自分の家の鳩舎(きゅうしゃ)まで、どれくらいの速さで飛んだかを競う競技」。
昭和の時代に一斉を風靡したスポーツです。鳩たちは、ときには1000キロを
超える距離を、あの小さな身体で、自分の家を目指して、飛び続けるのです。
(悟の父ちゃんは、稼ぎの大半をこの「鳩レース」につぎ込むほどのめりこんでいます!)
……みなとや悟と同様に、妖精のように美しいユリカもまた、悩んでいました。
三人は、ユリカが大切に育てた一羽の鳩に導かれるように、ある計画を立てます。
それは、彼らが、それぞれが今いる場所から、「一歩」踏み出すための冒険でした。
三人はどこへ向かったのか? その先にみつけたものは……?
かつて子どもであったすべての大人へ(あるいは今現在まだ、大人ではない読者の方にも)、
ぜひご一読いただきたい一冊です!!
(編集I)