『水のかたち』(上・下)宮本輝
上巻 定価:1,600円(本体)+税・下巻 定価:1,600円(本体)+税 9月26日発売
『水のかたち』刊行記念インタビュー
五〇歳を過ぎないと訪れない幸福がある
最新刊『水のかたち』は、五〇代になったばかりの主婦・能勢志乃子を主人公に、その日常に起きた出来事や人間関係が織り成す綾を丁寧に描いた長編小説である。志乃子は、東京の下町に夫と子供たちと共に暮らす、空想好きの人のよい主婦。そんな彼女がある日、閉店するという近所の古い喫茶店の女主人から、年代物の文机と茶碗、手文庫を貰い受けることに。その茶碗に三〇〇〇万円の価値があることが後で判明したり、同時に手に入れた手文庫には戦後北朝鮮から大変な苦難を越えて脱出した人物の手記が入っていたりと、穏やかだった志乃子の人生に思いがけない変化が生じる。緩やかな水の流れにさざ波が立つように──。
■五〇代の坂で試される人間力
■善き人たちとのつながりが幸福を呼ぶ
■実話を小説に合体させる試み
■五〇歳を過ぎないと巡り合えない幸福
聞き手・構成=宮内千和子/撮影=安珠
*このインタビューは「青春と読書」10月号に掲載されたものです
宮本 輝(みやもと・てる)1947年兵庫県生まれ。77年「泥の河」で太宰治賞を、87年「螢川」で芥川賞を受賞。著書に『道頓堀川』『錦繍』『青が散る』『流転の海』『優駿』(吉川英治文学賞)『焚火の終わり』『約束の冬』(芸術選奨文部科学大臣賞文学部門)『宮本輝全短篇』『骸骨ビルの庭』(司馬遼太郎賞)『三十光年の星たち』等多数。