『狭小邸宅』著者:新庄耕
定価:1,200円(本体)+税 2月5日発売
新庄耕×常見陽平
社畜と企業戦士の間
「狭小邸宅」で第36回すばる文学賞を受賞した新庄耕さんと、作家であり人材コンサルタントの常見陽平さん。常見さんが「狭小邸宅」を読んで下さったことをきっかけに、初の顔合わせが実現しました。お二人はリクルート出身という共通点もあり、リクルート勤務時代の話や、小説「狭小邸宅」における“社畜か企業戦士か”という問題について語っていただきました。
営業の手法
「社畜」か「企業戦士」か
「ライフワーク」と「ライスワーク」
新庄耕(しんじょう・こう)●1983年、京都市生まれ。神奈川県在住。慶応義塾大学卒業。会社員。2012年、「狭小邸宅」で第36回すばる文学賞受賞。話題を呼び、刊行から2ヵ月で重版を重ね、現在第4刷。現在、受賞後第1作を執筆中。
常見陽平(つねみ・ようへい)●1974年、宮城県生まれ。一橋大学卒業後、リクルート入社。2005年、大手玩具メーカーに転職。2009年、(株)クオリティー・オブ・ライフに入社。退社後、フェロー就任。HR総合研究所の客員研究員に就任。人材コンサルタントとして活躍。『就活難民にならないための大学生活30のルール』『「意識高い系」という病』『自由な働き方をつくる』ほか、著書多数。
さしたる目的もなく戸建不動産会社に就職した松尾。そこは売上という結果以外、評価されない職場だった。容赦ない上司からの暴力。過酷なノルマ。成果を上げることが出来ない日々が続き、ある日突然、異動命令という戦力外通告を受ける。異動先の営業所でも、有名大学出の売れない奴として周囲から冷ややかな態度を取られる。そこでも課長から辞職を迫られるが、ある日様々な運も幸いして一つの物件が売れた。そこから課長に営業のノウハウを叩き込まれ、売上も一変。同時に服装、言動まで変わっている自分に気付かされ――。やがてどれだけ売れても満たされない空虚に侵食されていく。
第36回すばる文学賞受賞作。選考委員の角田光代さん「あまりにも引きこまれ、蒲田の家が売れたとき私は泣いたほどである」。高橋源一郎さん「あまりに面白すぎる! ターゲットが「かまされる」シーンでは、いままでの新人賞の選考で、一度も読んだことのないほどの迫力を感じた」と賞賛!
あまりにもリアルすぎて本人の体験? と思いきや、元不動産会社勤務の友人を取材して書いたそうです。読者を引き込んで離さない展開と構成力、新人とは思えない筆力に瞠目。
新庄さん曰く「生きづれえな、という感覚を大事にしたかった。若者が鬱屈している部分がテーマとしてあります。ファンタジーのように現実から背をそむけるだけでなく、もう少し直視してみたいんです」(「ダ・ヴィンチ」3月号より)。働くということの意味を問い直される作品です。
純文学とエンタメの両要素を持ち合わせた、期待の大型新人の出現です。
営業マンの思考と行動、顧客の思惑を圧倒的なリアリティーで描く、前代未聞の“不動産”小説。是非御一読を!
(編集F・M)