『壺中の回廊』著者:松井今朝子
定価:1,600円(本体)+税 6月26日発売
昭和五年、関東大震災からようやく復興の兆しを見せつつあった東京を舞台に物語は幕を開きます。ニューヨーク発の世界恐慌の荒波、労働争議を皮切りにした社会への異議申し立ての高まり……。
旧き日本が変革の嵐に揺れていたまさにその時、歌舞伎の殿堂・木挽座に「掌中の珠を砕く」という一通の脅迫状が届きます。「掌中の珠」とは一体、誰のことなのか? 犯人の狙いは何なのか? 謎が謎を呼ぶなか、「忠臣蔵」の舞台中に歌舞伎界きっての人気役者が毒殺! 「嘘をつくのが商売」の役者たちに捜査は難航、築地署は江戸狂言作者の末裔・桜木治郎に捜査協力を要請するのですが――。
本書は歌舞伎への深い造詣と愛情を持つ松井さんにしか描けないバックステージミステリーです。そして同時に、昭和五年という激動の時代と2013年の現代が震災や不況といったいくつもの符号で重なる〈時代小説〉でもあります。濃密で読み応えたっぷりの物語をぜひご堪能ください。複雑に絡まる謎が解けた時、あなたは哀しみの目撃者になるはず!
(担当I・H)