『お伊勢ものがたり 親子三代道中記』著者:梶よう子
定価:1,600円(本体)+税 9月26日発売
2013年の今年、20年ぶりの遷宮の年を迎える伊勢神宮といえば、はるか昔から篤く信仰されてきたことが知られています。江戸時代に入ると、今でいう旅行会社の営業マン兼現地案内人のような役回りをしていた御師(おんし)が日本各地を回り、盛んにお伊勢参りを勧めるように。とはいえ、時間もお金もたっぷりとかかる旅ですから、当時の庶民にとってお伊勢参りは一生に一度の夢でした。
本書では、庶民とは少し異なりますが、あるお武家の三世代の女人たちが、ひょんなことからお伊勢参りに出かけることになります。
祖母のまつは、良妻賢母の鑑として生きてきたものの、還暦を控えてこれまで出来なかったお伊勢参りへの挑戦を心に決めます。また、母の香矢は子どもたちの手も離れ、夫は別の女に心を移してしまい、家の中に居場所が無く苦しんでいます。そして、孫の雪乃は十五歳になったばかり、芝居好きのおてんば娘ですが、親の決めた縁談が待ち受けていて……三人三様に心に思いを抱えていたところ、二条城に勤める香矢の夫のもとへ密書を届けるよう藩命が下ります。ところが、道案内を頼んでいた御師が突然倒れてしまい、急遽、頼りない御師見習いの久松が道中お供することに。不安をたくさん抱えたままに、武家の母娘孫三人の珍道中がはじまります。
若い女巾着切り、いわくありげな浪人者、犬を相棒にした抜け参りの子ども等、行く先々でさまざまな出会いがあり、別れがあり、それらはやがて、祖母の、母の、孫の生き方そのものを大きく変えていくのですが……それはぜひ、本書をお読みになってお確かめください。読むほどに人生が愛おしくなる、心あたたまる長編時代小説の誕生です。
(担当I・H)