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担当編集のテマエミソ新刊案内

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めぐり糸

  • 紙の本

『めぐり糸』著者:青山七恵

定価:1,900円(本体)+税 12月5日発売

青山七恵さん 刊行記念ミニインタビュー

(聞き手/担当H. K)

――「めぐり糸」は、その構想に約3年をかけ、連載期間も1年8カ月にわたり、青山さんの作品のなかでも最も長い作品です。本にまとまった今、どのようなことを感じていますか。

青山 自分の頭のなかだけにあった作品が、このように一冊の本にまとまったということが、とてもありがたい気がします。この作品を書くにあたって、いろいろな人から話を聞かせてもらったり、助けていただいたりしました。この3年間で私自身にも変化はありましたし、その間も小説を書いていたのですが、その〈時の堆積〉がこの本なのだという気がしました。自分が書いた作品というよりも、時の堆積でできた作品だという感じがします。

――長きにわたる連載で、その間ご自身にも変化があったということですが、「めぐり糸」は〈わたし〉という一人称視点の語りで描かれていて、文体は最初から最後までむしろ変わらずに整っています。

青山 はじめは、一人称視点の語りだけではなくて、ときどき地の文が出てきたり、別の人の語りが出てくるのかなと思っていたのです。でも、実際に書き始めると、そういう技巧的なことをすると物語の流れが滞ってしまう、つまり今ここにあるすごく奇妙な熱のようなものが消えてしまうように思ったので、ずっと独りの語りというかたちで続けていきました。

――連載中、物語の流れなどの面で、悩んだところなどはあったのでしょうか。

青山 小説の前半といいますか、連載の14話目までは、はじめに考えていたものと大幅な変更はありませんでした。ですが、主人公が独りで下関から帰ってくる14話目を書き終わったときに、これでようやく第一部が終わったのだということを小説のほうから知らされて、私はとてもびっくりしました。14回から15回への切り替えのところで12年ほど経っているのですが、そのときは後半をどうしようかなという気持ちになりました。

――長い作品ですが、ラストシーンはあらかじめ考えていたのでしょうか。

青山 ぼんやりと考えてはいました。ですが、具体的にどういう言葉で終わらせようということまで決めていたわけではありません。

――しかし、はじまりと終わりは見事に呼応していますね。計算して書かれたというようなものを遥かに超えたような、強い情動と大きなうねりをもって物語が進んでいくにもかかわらず、全体としてとてもまとまった作品になっています。

青山 考えるのは私なのですが、主人公たちからの圧力のようなものはずっとあった気がします。中盤くらいからは、書き手として自分がこうしたいという意志は勿論あるのですが、小説の力のほうが強くなっていく感触もありました。主人公が語る〈時〉、そして記憶のねじれやゆがみといったものがそのまま出ている小説だと思います。なおかつ彼女を取り巻くあらゆるものが循環しているというイメージも、書いているあいだずっと持っていました。最終的にまとまった作品になったのも、著者の小さな意志ではなく、小説の大きな力が働いたからだと思います。


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