『彼が通る不思議なコースを私も』著者:白石一文
定価:1,600円(本体)+税 1月6日発売
第142回直木賞を受賞した『ほかならぬ人へ』をはじめ、「運命」を巡る数々の名著を物してきた白石一文さんによる、待望の最新長編小説『彼が通る不思議なコースを私も』が、ついに刊行されます。
物語の主人公は、大学を出て大手家電メーカーに勤める、霧子。
ある日、彼女は友人カップルの別れ話に巻き込まれ、別れを切り出された彼氏がビルの10階から飛び降りる…という修羅場に遭遇する。その緊迫した現場で、霧子は黒ずくめの不思議な男を見かけた。しかし男は霧子たちを助けもせず、いつの間にかいなくなってしまう。しばらくして、霧子はひょんなことから飲み会の場でその男と再会。彼の名前は椿林太郎。初対面の印象とは違い、彼は学習障害児の指導に携わる優秀な小学校教師だった。
「本物の時間というのは、絶えず伸びたり縮んだりしているんだよ。
人間はみんなひとりひとり、持っている時間の長さが違うんだ――」
彼は、小学校時代に自らの学習障害に悩んだ経験があり、教育の実践からこの世界を変えることを心に強く期していた。霧子はそんな彼にどんどん魅かれていく。しかし実は、彼には知られざる不思議な能力があって……。
・・・とあらすじを書いてみましたが、この小説はダイジェストでは到底説明できない、多面的な物語です。
「世界を変える男の話」であり、「夫婦関係を巡る小説」であり、「子どもの持つ可能性について考えさせられる小説」でもあり、また、「人生における”時間”(寿命)とはなにか?」といった深い問いをも内包しています。
読む人によって、この作品の印象は千変万化するはずです。ただひとつ確かなことは、非常に濃密に織られた、とてもエキサイティングな小説だということです。
初めてこの原稿をいただいたときに、その面白さに大興奮するとともに、人間の持つまだ未知の可能性に眼が開かれる思いがしたことを、いまでもありありと覚えています。
ぜひご一読ください。
(担当:AT)
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「小説すばる」12月号 新刊レビュー(評者:松原耕二)
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