『結婚』著者:橋本治
定価:1,500円(本体)+税 7月4日発売
揺れる心情を冴えた筆致で描いた傑作長編。
〈あらすじ〉
倫子(りんこ)は28歳。恋愛が苦手で、これまで男性とは何となく付き合ってきただけだった。しかし、あるとき卵子老化について書かれた本を読み、そこに示された事実に動顛、急に「結婚」の二文字を意識し始める。3歳年上の兄・直樹が結婚するときに、相手の女性・絵里が30歳になる前になどと言っていたことも思い出した。しかし、倫子には結婚したいと思う男性がいないうえ、自分の両親も含めて世の中のカップルがなぜ結婚できているのかもわからない。そんな中、職場の同僚・花蓮(かれん)の結婚話も具体化していく……。「自分が結婚できないのは相手がいないから」というシンプルな事実を認めた倫子がとった行動とは――。
「私さ、東京に出て来てちょっと損したなって思うことがあるの」
「なに?」
「高校の友達、向こうに置いて来ちゃったこと」
「どうして?」
「だって、あんたの彼は、高校の時の友達の友達でしょ? 私にそういうのいないもん。高校の友達、向こうに置いて来ちゃったから。大学の友達って、あんまりそういう輪って広がらないから、やっぱり東京の人っていいなって思う」
「そうかもしれないね」と、東京出身の花蓮は言った。
「なんか、大学の友達って、ライバルっぽいもんね。卒業しちゃうと、なんか、改まっちゃうよね」
「でしょ? 結婚するんだったらやっぱりさ、早い内に網を広げとかないとだめなのよ」
「網?」
(担当編集から)
恋愛や結婚に関する書は世の中に溢れていますが、橋本治さんの筆による本書は、著者一流の視点と文章表現により、このテーマの一つの本質をついています。ぜひ楽しんでお読みいただけましたら幸いです。
(担当 H. K.)