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1945年と現代の<8月>が交錯しながら展開する、感動の長編小説。
書評、インタビュー他(更新随時) 「八月の青い蝶」の世界 受賞の言葉
  1945年と現代の<8月>が交錯しながら展開する、感動の長編小説。 第26回 小説すばる新人賞受賞作 八月の青い蝶
受賞の言葉
八月の青い蝶
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四六判ハードカバー 280頁
定価:1,400円(本体)+税
ISBN978-4-08-771547-7
周防 柳
 この小説は陸軍の軍人の子として広島に生まれ、中学生のときに被爆した私の父親をモデルとした作品です。しかしながら、ここに書かれてあることの九割はフィクションです。なぜならば、父は自分の過去についてなにも語らず、私のほうも父の痛みに触れる遠慮からなにも聞けずに終わったからです。
 父の被爆体験は、小説家を志す私にとってはいつか書いてみたいテーマの一つでした。ゆえに、父が白血病でついに去ったとき、これですべてわからずじまいになった、と後悔に唇をかみました。しかし、逆説のようですが、だからこそどうしても書かねばならぬと奮い立ったのです。
 人はおそらく、いちばんだいじなことは言わないのでしょう。そして、そのわからないことの中にわけいっていくのが小説なのではないでしょうか。そのことに、この年になってようやく気づきました。
 「がんばれのう、期待しとるけのう」というのが、父からもらった最後のことばでした。いまこの私を、父は天国でどう見てくれているでしょうか。
 末筆となりますが、このようなつたないものに目を止めてくださった選考委員の先生方に、心より御礼を申し上げます。


「八月の青い蝶」の世界
物語
 急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学生のときに被爆していた。大日本帝国陸軍・一〇〇式司令部偵察機搭乗員のひとり息子であった彼は、当時、広島市内に住んでいたのだ。妻と娘は、亮輔が大事にしている仏壇で、異様に古びた標本箱を発見する。そこには、前翅の一部が欠けた小さな青い蝶が、ピンでとめられていた。妻も娘も知らなかったが、それは昭和20年8月に突然断ち切られた、切ない恋物語を記憶する大切な品だった。昭和20年と現代の〈8月〉が交錯しながら展開する鮮烈な長編小説。
主要登場人物
熊谷亮輔 昭和20年に中学一年生。広島市在住。虫好きの元気な少年であり、8月6日は建物疎開で動員されていた。終戦後、サラリーマンを経て事業を始める。80歳近くなって白血病を患う。 熊谷多江子 亮輔の妻。亮輔と同じく広島人。 きみ子 亮輔の娘。東京のホテルに勤務。
熊谷 強 亮輔の父。大日本帝国陸軍に所属し、一〇〇式司令部偵察機の搭乗員をつとめていた。 熊谷時宗 亮輔の祖父。軍人。 熊谷福子 亮輔の継母。
タキ 亮輔の祖母。 小川希恵 昆虫学者の娘。埼玉で強と出会って身ごもり、広島に来ることに。 るい 希恵の母。埼玉の料亭で仲居をしていた。
ばあや 希恵の世話をするために広島に。 豊田欽四郎 亮輔とともに被爆し、唯一生き残った級友。戦後、亮輔と事業を始める。 教師 きみ子の小学生時代の担任。原爆をめぐり亮輔と激論する。
書評、インタビュー他(更新随時)
 ◎ 第5回広島本大賞「小説部門」大賞を受賞しました(2015/3/20)
 ◎ 「小説すばる」12月号(2013/11/17発売)にインタビュー掲載。
 ◎ 「青春と読書」3月号(2014/2/20発売)に村山由佳さんとの対談「父に聞けなかったこと……」を掲載。
 ◎ 「ダ・ヴィンチ」3月号(2014/2/6発売)にインタビューが掲載。
 ◎ 「マキア」4月号(2014/2/23発売)に書評が掲載。
 ◎ 「an. an」1895号(2014/2/26発売)に著者インタビュー掲載。
 ◎ 「月刊J-novel」3月号(2014/2/15発売)に書評(香山二三郎氏)が掲載。
 ◎ 「中国新聞」(2014/2/27朝刊)に著者インタビュー掲載。
 ◎ 「SANKEI EXPRESS」(2014/3/9付)に著者インタビュー掲載。
 ◎ 「朝日新聞」(2014/4/2朝刊)に著者インタビュー掲載
 ◎ 「北海道新聞」(2014/4/6朝刊)に書評(吉田和明氏)が掲載。
 ◎ 「中国新聞」(2014/8/5朝刊)にインタビューが掲載。
 ◎ 「読売新聞」(2014/8/6、広島総局版朝刊)にインタビューが掲載。
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