主人公は元ストリッパー。『ホテルローヤル』(直木賞受賞作)から3年、桜木紫乃が放つ、極上の長編小説『裸の華』、ついに発売!
定価:1,500円(本体)+税 6月24日発売
舞台上での怪我が原因で引退を決意した、ストリッパーのノリカ。故郷の札幌に戻り、自分の店を開く彼女の元に、ダンサー志望の二人の若い女性が現れる……。
踊り子(ストリッパー)の矜持と生きざまを鮮烈に描いた、感動の長編小説。
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ふと、怪我をした日に舞台まで飛んできた音響照明のサブローを思いだした。
――ノリカちゃん折れとる、その脚、折れとるよ。
赤いドレス姿のノリカを抱いて細い階段を下りたサブローは、救急車に運び込んだあとも泣いていた。
――サブちゃん、わたし必ず復帰するから、誰も見舞いには来ないでって伝えて。
サブローは律儀に、一度も病院に顔を出さなかった。
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雪道を歩きながらみのりの振り付けを考えていると、この曲で踊っていた頃の自分が薄れてゆく。ミラーボールの下で空間を引き延ばしてゆくのが、ノリカの指先ではなく彼女のそれに変化する。大柄なノリカが小屋の舞台で踊って見栄えがするように組み立てたものを一度解体して、みのりが持てる技術と表現力で見る者を圧倒するような演目にしたい。
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「ねぇ、今まで誰に見せるために踊っていたか、教えて」
「バレエのときは、いちばん高い席に。競技会のときは審査員です」
「わたしの振り付けは、ストリッパー仕様なの。だから、お金を払ってくれたお客さんに届かなかったらおしまい」
「どうすれば、ノリカさんみたいに踊れるようになりますか」
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恥を別のものに変えるために、この心はいったいなにと向き合い、なにと闘ってきたのだろう。
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長年、踊り子さんの舞台を見続けてきた桜木紫乃さんならではの長編小説です。師から弟子へと伝えられる踊り子さんのスピリットが心に響きます。