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逝年

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『逝年』石田衣良

定価:1,400円(本体)+税 3月26日発売

文庫となり、今も版を重ね続ける「娼年」。
ファンには言わずもがなですが、99年に発刊された石田衣良氏の書き下ろし小説です。
当時、一読してまず抱いたのは、説明しがたい恍惚感でした。
激しい性描写が連ねられるにもかかわらず、この透明感は一体なんだろう・・・。
常に品格が保たれるそのわけはなんだろう・・・。

デビュー作「池袋ウエストゲートパーク」で、その文章力には定評がありましたが、
あのシリーズの持つスピード感とは別の、どこか荘厳な気配さえ漂う文体ではありませんか。
そして、性愛小説の傑作といわれた「娼年」の続編が、こちらの「逝年」です。
実は、「娼年」をお書きいただいているときに、すでに続編のタイトルとおおまかな内容も決まっていました。打ち合わせの喫茶店にあったコースター裏に「逝年」と石田さんが書き記しながら話してくださったのも、懐かしい思い出・・・。

前作では、男娼という仕事に戸惑い通しだった主人公が、「逝年」では、心身ともに成長を見せます。
胸には常に、ずっと好きだった<あの人>への思いを秘めながら。
そして、待ちに待った再会を迎えますが、運命は愛しい人と過ごす時間に残酷なリミットを刻みます。
お互いそれを知りながらの最初で最期の至高の夜・・・・と、あとは読んでからのお楽しみ!
石田さんの恋愛小説が、あるいは恋愛と限らずとも、多くの読者をひきつけるのはなぜか。
それは、石田さんが彼ら彼女たちの魂の純度をすくいとってくれるから、のような気がします。
どんなタイプの女性にも(たとえ、見た目、性格に問題大ありだったとしても)、必ず魅力を見出してくださる・・・人に対してネガティヴな発言を石田さんから聞いたことがありません。
人を多面的にとらえられる、また、己も気付かない美点に光をあててくれる、その柔軟性と優しさが、読者をつかんで放さないのでしょう。

さて、多作の石田さんですが、集英社の次の作品は、「小説すばる」にて初夏頃より連載の予定。
あっ! と驚く新境地に挑戦してくださいます。
とどまるところを知らない石田衣良の進化・深化を見せ付けてくださるはずです。
(編集K)


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