攘夷に揺れる幕末の大坂。天誅による暗殺は正義?それともテロ?「志」を模索する若者の姿を描く、感涙の時代長編!
定価:2,000円(本体)+税 7月5日発売
「ひとの命を軽んじることこそ、国の罹るもっとも重い病なのです」
舞台は文久一年の大坂。田舎の村を出た若者・弥吉が、「使命」を胸に大坂へ向かうシーンから始まります。
尊皇攘夷の志を持つ彼は、蘭学者の緒方洪庵に入門し、折を見て洪庵を「暗殺」することを企てていたのです。
そしてなんとか洪庵が開いている適塾への潜入に成功。しかし、実際に洪庵の人柄に触れるうち、少しずつ迷いが生まれていきます。
一方、弥吉の郷里の村では、尊皇攘夷の急進派・天誅組に加わるため、村人たちが動き出します。
弥吉は挙兵を止めようと奔走しますが――。
幕末を描く時代小説でありながら、読み進めるにつれ、現代の政治のポピュリズムや頻発する自爆テロなど、同時代のトピックを思わず想起する場面も。「正義」のあり方を深く考えさせられる骨太な一作です。ぜひご一読ください。
(編集A・T)
犬飼六岐 いぬかい・ろっき
1964年大阪府生まれ。大阪教育大学卒業。公務員を経て、2000年「筋違い半介」で第68回小説現代新人賞を受賞しデビュー。2010年に『蛻』で第144回直木賞候補となる。その他、『叛旗は胸にありて』『佐助を討て』『騙し絵』『決戦の島 吉岡清三郎貸腕帳』など著書多数。