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担当編集のテマエミソ新刊案内

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床屋さんへちょっと

  • 紙の本

『床屋さんへちょっと』山本幸久

定価:1,500円(本体)+税 8月26日発売

未曾有の大不況のなか、誰もが今までとは違う生活、違う考え方に
シフトしつつある今日この頃。
私が最近考えるのは、「会社」というものの不思議さです。
今まで大して意識しなかったのに、苦境を迎え、
「そもそも会社って何だろ? 経営って? ビジョンって?」
と普段考えないことが頭をよぎったりします。
自分もその一部でありながら、実は仕組みがよく分かっていない。
家族でも恋人でも友達でもない人たちと、長い時間一緒にいる。
会社って、本当に不思議です。

山本幸久さんの新刊は、会社という場所で人生の半分近くを生きてきた男と、
その娘の心のつながりを描いた作品。
そろそろお迎えがきてもおかしくない年齢になった宍倉勲(ししくら・いさお)。
そんな彼の過去を70代から20代へとさかのほり、
時代時代の勲の奮闘と、それを見ていた娘・香(かおる)の姿を追った
連作長編です。

勲は20代半ばで二代目社長となり父から事業を受け継ぐも、
会社は結局15年後に倒産。
再就職して出直し、取引先の罵声を浴び上司の嫌がらせを受けながらも、
「父の事業を潰した」という負い目を背負ってしまった男は、
誠実に働きつづけます。

そんな父の姿をずっと見つめていたのが、娘・香。
「会社って意外と面白いそう」と、小さい頃から会社で働くことに
関心と憧れを持つようになります。
親にしてみれば、就職直後に突然「辞めて起業したい」と言い出したり、
30過ぎになって頼りない男を婚約者として連れてきたりする香は、
いつまでたっても何を考えているのか分からないワガママ娘です。

親の働く姿を見て「私もああなりたい」と思うにせよ、
「絶対ああはなるまい」と思うにせよ、
子供は何がしかの影響を受けているもの。
直接口には出さなくても、親の背中に滲んでいるものは
子供に伝わっているんです。
たとえそのとき分かりあえなくても。

不況のなか頑張って働くお父さん達に、また、そんなお父さんを持つ女性達に
ぜひ読んで欲しい一冊です。
(編集H)


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