青春は気まずさでできた密室だ——。
今、最注目の若手ミステリー作家が贈る珠玉の短編集。
始発の電車で、放課後のファミレスで、観覧車のゴンドラの中で。不器用な高校生たちの関係が、小さな謎と会話を通じて、少しずつ変わってゆく——。
ワンシチュエーション(場面転換なし)&リアルタイム進行でまっすぐあなたにお届けする、五つの“青春密室劇”。書き下ろしエピローグ付き。
「早朝始発の殺風景」
早朝始発の列車でなぜか出会った同級生(あまり仲はよくない)の思惑はどこにある——?
男女の高校生がガラガラの車内で探り合いの会話を交わす。
「メロンソーダ・ファクトリー」
女子高生三人はいつものファミレスにいた。いつもの放課後、いつものメロンソーダ。
ただひとつだけいつも通りでないのは、詩子が珍しく真田の意見に反対したこと。
「夢の国には観覧車がない」
高校生活の集大成、引退記念でやってきた幕張ソレイユランド。気になる後輩もいっしょだ。なのに、なぜ、男二人で観覧車に乗っているんだろう——。
「捨て猫と兄妹喧嘩」
半年ぶりに会ったというのに、兄貴の挨拶は軽かった。いかにも社交辞令って感じのやりとり。でも、違う。相談したいのは、こんなことじゃないんだ。
「三月四日、午後二時半の密室」
煤木戸さんは、よりによって今日という日に学校を欠席した。
そうでもなければ、いくらクラス委員だとしても家にまでお邪魔しなかっただろう。
密室の中のなれない会話は思わぬ方にころがっていき——。
「エピローグ」
登場人物総出演。読んでのお楽しみ。
青崎さんは学園物が本当に上手い!
リア充な高校生活を堪能したのに違いない。(嫉妬)
名前以外は、何処にでもありそうな場所、居てそうな男子女子高生なんだけど、こんな日常の中にも、ささやかな事件は起こり続ける。
そしてワンシチュエーションながら、緻密に本格推理の形式に則り、見事に論理的に問題は解決されて行くのであった。
まるで何事も無かったかの様に。
エピローグのオールスターキャストは最高だぁ。
下の名前を知り合った後の二人の物語が読みたいなぁ。
ああ、青春!
期せずして一緒に行動しなくちゃいけなくなったクラスメイト。
ずっと仲良しでいられると思っている友達。
今まで特に気にしていなかった後輩。
同じ距離感のまま、毎日が過ぎるなんて嘘なんじゃないかと思います。時に学生時代は。
一日学校を休んだだけで、クラスの雰囲気が自分によそよそしく感じる時があるように。
肌感で、気配で、言葉の切れ端で。
なんとなくいつもと違う距離を感じてしまう——。
急に近くなるときもあれば、これまた急に遥か遠くになることも。
そのときにいつも漂う「気まずさ」が、この作品にはつまっています。
あの感じ、あの緊張をこんなにリアルに書けるのは、さすがは青崎さん。
本当に素晴らしいです。
短編五編の登場人物全員の肩に手を置いて、訳知り顔で言いたいです。
「わかるよ」
と。(そして、新たな気まずさが生まれる……)
ミステリー好きの方にも太鼓判の短編集となっております。
ぜひ、ご一読を。