どんな時でも真っ向勝負、強烈にエネルギッシュな変わり者「恵子おばさん」に導かれ、札幌の児童養護施設「魴ぼう舎」の中学生たちが厳しい現実と向き合いながらのびやかな成長を遂げるさまを描いた『おれのおばさん』。シリーズ3作目は主人公・陽介が高校進学を機に札幌を離れるところからスタート。仙台市の高校の寮に入った陽介。当初は横領罪で服役中の父親のことを知られないよう控えめにしていたが、政治家の息子・中本、中国からの留学生・周(しゅう)、芸大志望の変り種・菅野と、多彩な顔ぶれの同級生たちと、生徒会の役員選挙や学園祭の準備などを通じていつしか深い絆ができあがっていく。その学園祭の最中に東北地方一帯を襲った大地震。避難所となった学校と寮の手伝いのため仙台に残ることを決めた陽介は、学校が再開された暁には、中止となった学園祭パート2を実施することを決意する。少しずつ学校に人が戻ってきた矢先、父親が出所、高崎の老人介護施設で働いていることを知る。「親父さんに会ってこい」という友人たちの声に押され、夜行バスで向かうが――。
表題作ほか、恵子おばさんの誕生日の一日を描く、書き下ろし短編「あたしのあした」を収録。