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ここに消えない会話がある

  • 紙の本

『ここに消えない会話がある』山崎ナオコーラ

定価:1,100円(本体)+税 7月24日発売

(2)■会話が持つ魅力について――「詩のような会話を書きたい」

ナオコーラさんの小説は、いつも会話がとても魅力的だと思います。今回、『ここに消えない会話がある』というタイトルからも窺えるように、ずいぶん「会話」にこだわったようですが。

――小説の会話って、すごいですよね。音声がないじゃないですか。だから脚本とも違うし、雰囲気というか、空気もない。だけど、とても惹きつけられるし、印象に残るんです。

確かに、小説の中のセリフは妙に覚えていたりしますね。
ナオコーラさんが「会話」を書くときにこだわっていることはありますか。

――ストーリーを運ぶための会話ではなくて、詩のような会話にしたい、というのは、今回特に強く思いながら書きました。

言葉がふつふつと湧くように出てきているような会話ですよね。詩のような小説にしたい、というのは最初からおっしゃっていて、その想いは本づくりにも反映されました。

――「会話」を読ませる小説ということで、本文の組み方も、装丁家の祖父江慎さんが色々とこだわってくださいました。会話文が一字下げになっていたり、「小かぎ」という、横線が短いカギかっこを使ったり、工夫してくださったんですよね。

祖父江さんは本文組みにすごく力を入れる方で、今回もこの作品が一番生きるかたちで組んでくださいました。
ところで、普段ご自身が交わす会話の中から、何かヒントを得たりもするのでしょうか。

――会話にも、詩情ってありますよね。いわゆる「会話がうまくいく」というと、意見がしっかり伝わったとか、お笑い的な「落ち」がある話ができたとか、恋愛でモテトークができたとか、色々あるとは思うんですが、それ以外に、なにかほんのちょっと情趣が出ました、みたいな会話もあると思って、それを書きたかったんです。
みんなも、実は思ってるんじゃないかな、「さっきの会話、詩みたいだったな」とか、「絶妙な会話がいま生まれたな」とかって。

確かに、ちょっと嬉しくなってしまうような掛け合いが生まれることってありますね。その「ほんのちょっとの情趣」が滲み出ていて、思わず心がふわっと浮き立つような会話が、この作品にはたくさん出てきます。一番書きたかったのは、やはり「『ジューシー』ってなんですか」というセリフが出てくるシーンですか。

――あのシーンは小説の中でもクライマックスのシーンです。自分では、そこと、あとハムスターに名前をつけるやりとりは一番書きたかったところです。


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