【新連載】 
柴崎友香「続きと始まり」 
空っぽのままのスーパーの棚は、9年前の「あのとき」を思い出させる。当時は想像もしなかった生活をしている優子は、誰もに同じように流れたはずの月日のことを考える。私たちの中に堆積した時間を見つめる、注目の最新長篇。 

【連作小説最終回】 
小川洋子「掌に眠る舞台」 無限ヤモリ 
子宝の湯として有名になり、かつては湯治に訪れる人でにぎわっていた温泉地にその保養所はあった。フロントの隅にプラスチックの虫籠が置いてある。そこにいるのはヤモリで、必ず「二匹一緒」に売られて人気があるというのだが……。 

【小説】 
小山内恵美子「有縁無縁」 
あたらしい仏壇がやってきた。コロナ禍の入仏式でひさしぶりに会した夫と義弟の姿をみて、義母がいたらどんなに喜んだだろうと思う。しかし「私」は、この仏壇にまつられる先祖のことをほとんど知らないのだった……。 

【2022すばるクリティーク賞発表】 
鴇田義晴「90年代サブカルチャーと倫理――村崎百郎論」 
ゴミ漁りをライフワークとし、鬼畜系ライターとして活躍した村崎百郎。彼は一体何者だったのか。東京五輪の開会式を巡って90年代のサブカルチャーに注目が集まる今、そのテクストの意義を問う。 

【新連載】 
今福龍太「仮面考」 
「仮面」とは自己と世界とのかかわりを問う根源的なもの。しかし現代において「顔」は表層の情報記号となり、疫病まん延下「マスク」時代の只中にいる。仮面をモティーフとする文学・思想的テクストの解読を通じて「仮面」の現代的復権のヴィジョンを探究する。 

【新連載】 
くぼたのぞみ+斎藤真理子「往復書簡 曇る眼鏡を拭きながら」 
故郷の風景や家族を巡る思い出、先達や仲間との出会い、そして「翻訳」というライフワーク。翻訳者のお二人が、これまで踏み分け歩んできた道のりを改めて見つめ、綴り交わす往復書簡。第一回はくぼたのぞみさんの一通目。 

【対談】 
温又柔+武田砂鉄「「純粋な日本人男性」のための社会を削り取れ」 
オリンピックが終わっても何一つ変わらない、それどころか強化されたようにすら感じる日本社会のマチズモ(男性優位主義)。決定権を持つ人たちの考えの根っこにあるものをしつこく掘り起こす。 

【対談】 
中村佑子+元橋利恵「自明視され/タブー視されてきた母を、今あえて語る」 
「母性」の解体がある程度まで進んだ今こそ、「母」に光をあてる必要があるのではないか。母たちが置かれた困難な状況を通して、健康な男性を基準に運営される現代社会のひずみを見つめる。 

連載小説、対談、エッセイ、コラム等、豊富な内容で毎月6日発売です。