滝口悠生さんの新連載小説「透波と乱波」がスタート!
東京・三軒茶屋を舞台に現代の「忍びの者」を描く意欲作。
『最愛の』刊行記念対談では、上田岳弘さんと高橋一生さんが創作と表現について語り合う。

【新連載】
滝口悠生「透波と乱波」
三軒茶屋の三角地帯からわずかに外れて建つ雑居ビルの一階奥に、その店はある。小さな縦長の店内で、開店に向けて餃子を仕込む彼女の名は、乱波さん。二年前からここで働き、店の経営者・透波先生を師に持つ、現代の「忍びの者」である。

【小説】
古川真人「シャンシャンパナ案内」
足の悪い大叔母・多津子の散歩の付き添いを頼まれた稔。吉川の納屋のさらに先にある「シャンシャンパナ」まで歩こうという多津子の提案で、二人はゆっくりと歩みを進める。かつて違う様相を見せていた風景が、稔の幼い頃の記憶を呼び起こす……。

【小説】
温又柔「二匹の虎」
台湾にいる祖母が亡くなった。父から電話で告げられた「私」は、お葬式に出るため空港へ向かう。前回、父の暮らす台湾を訪れたのは三年前のこと。思えば自分が初めて日本に来たのは三歳のころで……。移動の狭間に浮かぶ思考を紡ぎ、過去と現在を繋ぐ中編。

【未邦訳短編】
ケリー・リンク「白猫の離婚」
あるところに大金持ちの男が住んでいた。男には前の前の前の……妻との間に末はもう19歳になる三人の息子がいたが、最近なぜか四人目の息子の夢を見るようになって……。幻想文学の名手リンクが描く傑作短編。訳・解説は金子ゆき子。

【『最愛の』刊行記念対談】
上田岳弘×高橋一生「合理の激流に抗う、表現の力」
今年作家生活10周年を迎えた上田氏。かねてよりお付き合いがあり、上田作品を読み続けてきた俳優の高橋氏をお迎えし、新刊『最愛の』と舞台『2020』を入り口に、表現と創作について語っていただいた。

【講演】
池澤夏樹「父・福永武彦のこと」
作家が初めて父のことを語った講演を収録。母の再婚相手の池澤氏を父と思って育った作家が、高校受験のときに福永氏の存在を知り、会いに行く決心をする。父の研究室に通った日々を回想し創作の共通点を分析するなど、文学史的にも貴重な記録。

【対談再録】
アニー・エルノー×津島佑子「現代を生きる情熱」
アニー・エルノー氏のノーベル文学賞受賞から1年、世界ではウクライナ侵攻、パレスチナ問題と悲惨な出来事が続く。自身の文学を通じ震災や戦争と向き合い続けた作家、故・津島佑子氏と2004年に行った対談を再録。

【エッセイ】
2023年のノーベル文学賞を受賞したノルウェーの作家ヨン・フォッセについて、長島確が「わたしたちは互いに異なる世界である」を、横山義志が「存在のゆらぎに耳を傾ける──ヨン・フォッセ『だれか、来る』とクロード・レジ」を寄稿。

【すばるクリティーク】
赤井浩太「堕天使の加速――Tohji論」
近代に入って世界の速度体制は「加速」する一方だ。若者を中心に人気を集めるラッパー、Tohjiの作品にも「加速」のイメージがある。歌詞、音を通して見えてくる「加速」への欲望と身体の「機械化」。その意味するところとは――。

【第48回すばる文学賞】
みずみずしく意欲的な力作・秀作をお待ちしています。募集要項は http://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/  をご覧ください!

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