新作小説は、石沢麻依さん、古川真人さん、水村美苗さん、金石範さん、椎名誠さんらの珠玉の作品が勢ぞろい
新刊刊行を記念しての、柴崎友香さん×斎藤真理子さん、西加奈子さん×長島有里枝さんの対談には「今」を生きるために不可欠な視点が!

【小説】
石沢麻依「木偏の母」
同居人のエレナを通じて日本語の個人レッスンの教師を引き受けた「私」。訪ねた家で待っていたのは、濃い栗色の長い髪を古風な冠のように編み込んだ五十代後半の女性だった。ダフネと名乗る彼女は、漢字を自在に使えるようになりたいのだと言う。

【小説】
古川真人「鳶」
親戚の結婚式にやってきた稔。煙草を一服しに外へ出ると、空を旋回する鳶が目にとまった。ふと、ひとむかし前の夏、幼かった稔が長崎の島で父と共に見た光景がよみがえる――。

【小説】
水村美苗「Red No.28」
この赤。散歩道に落ちる紅い葉を見ながら、彌生は二十年前に気に入って、複数本購入した口紅のことを思い出した。長年、山荘の庭を整えてくれていた石村と、夫を偲ぶための食事をすることになり、化粧品を入れた引出の底を探してみると……。

【小説】
金石範「ミョンスンとキジュン」
済州島・ハルラ山のふもとの観音寺で療養しているミョンスンとキジュン。八寸(八親等)の姉弟のふたりには同じ胸の病があった。互いへの思いを抱きながらそれぞれの家に戻るが、ある日キジュンは夢のなかでミョンスンの声をきく。会いたい――。

【小説】
椎名誠「機械牛と鳥人間との旅」
宿場町の賭博場で、発明王に大勝ちをした灰汁。勝ち金として手に入れたのは、どんな悪路でも進む移動機械「機械牛」だった。その機械に目をつけた怪しい男の依頼を受け、難所を越えた先にある「ズンガロ」地帯を目指すのだが……。

【『続きと始まり』刊行記念対談】
柴崎友香×斎藤真理子「終わらない“続き”を生きていく」
コロナ禍がもたらした時間と記憶の変容、韓国文学における社会と個人の関係性等……お互いの仕事を追いかけてきたという二人が、本誌での同時期連載を経て初めてじっくりと言葉を交わす。

【『わたしに会いたい』刊行記念対談】
西加奈子×長島有里枝「間違えてもいいから、優しいままであること」
フィクションとノンフィクション、外国での生活がもたらした視点、正しさと優しさ――初対面の二人が自らの現在地をみつめ、率直な言葉を交わす。

【『曇る眼鏡を拭きながら』刊行記念読書会】
井戸川射子×小山内園子×小松原織香「私たちの前に置かれたバトン」
翻訳者のくぼたのぞみさん・斎藤真理子さんによる往復書簡を題材に、言葉を生業とするお三方による読書会が実現。世代の違いや言葉への姿勢をめぐって議論は深まり……。

【対談】
管啓次郎×堀江敏幸「本の島をわたってゆく旅」
昨年出版された管氏の書評/読書論『本と貝殻』、そして詩集『一週間、その他の小さな旅』。二冊の刊行を記念し青山ブックセンターで開催された堀江氏との対談を載録。本を読むことの喜びを巡って交わされた言葉を辿る。

【講演】
四方田犬彦「中上健次とパゾリーニ」
中上健次が亡くなり、その不在を埋めるように、ボローニャ大学でイタリアの映画作家パゾリーニの詩と映像の探究をした筆者。今、パゾリーニの横に中上健次を並べてみてわかることとは? 「2023熊野大学夏期セミナー」での講演を改めて執筆。

【すばるクリティーク】
奥憲介「反戦のための序章──梅崎春生『桜島』論」
わたしがわたしであるために生と死は誰にも譲り渡してはならず、誰のものも剥奪してはならない。しかし、政治権力は今も昔も人間の個別性を剥奪しようとする。梅崎の物語は、現代の戦争をも照射する。

【追悼 三木卓】
川村湊「“小さきもの”への慈しみ」
三木作品を愛読していた筆者は、大学時代にロシア語の非常勤講師の冨田三樹先生として知り合い、文学談義を重ね、「鶸」が芥川賞を受賞する前に共に祝った。「満洲体験」「身体性へのこだわり」を通し、作品のヒューマニティを綴る。

【第48回すばる文学賞】
みずみずしく意欲的な力作・秀作をお待ちしています。募集要項は http://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/  をご覧ください!

連載小説、対談、エッセイ、コラム等、豊富な内容で毎月6日発売です。