祝・直木賞受賞! 河﨑秋子さんの新作は「正体不明の毛皮」をめぐる短編。
注目の新連載は、李琴峰さん、武田砂鉄さん、岸本佐知子さん×杉田比呂美さん。
特集「ティータイムの効用」ではお茶と創作の関係が浮かびあがる……!

【小説】
河﨑秋子「化けの毛皮」
札幌で一人暮らしをしている大学生の今宮亨は小樽に帰省していた。母親から実家の廃寺となった本堂の片づけを頼まれたのだ。寺の納戸や棚から出てきた物品の中に、正体不明の動物の毛皮があった。そこに今は亡き祖父と縁があるという不思議な二人連れが現れ……。

【小説新連載】
李琴峰「世界文学の交差点 アイオワ印象」
第一回「赤い台地と青い湖」。2023年秋に2か月半、アイオワシティで開催された「ライター・イン・レジデンス」に参加した体験から生まれた物語。世界各地から集まった作家たちは語らい、時にぶつかりながらもそれぞれの創作に没頭する。

【新連載】
武田砂鉄「ルサンチマンをぶち壊せ」
『マチズモを削り取れ』に連なる、待望の新連載! 「ご自身の権力を実感したことはありますか?」。武田さんのもとに再び編集Kからの檄文が届く。「強者」と「弱者」の分断が色濃くなるいま、本当の「強さ」とは? 「権力」をキーワードに現場に赴き、考え、検証していく。

【新連載】
岸本佐知子×杉田比呂美「ふたりのミッション」
ふたりに課せられたミッション、それはひとつの“ことば”がインスパイアする何かを形にすること。作品完成までは相手の活動に一切関知しない。今日もふたりはそれぞれの机に向かい、ことばの声に耳を澄ましている……。

【特集:ティータイムの効用】
お茶はおいしくて体にいいだけじゃない。お茶をする時間が、日常生活での気持ちの切り替えや、人とのコミュニケーションに力を発揮する。創作者たちにも刺激を与えるティータイムの効用を、ルポ、小説、エッセイを通して探ります。

ルポ/千早茜「京のお茶会」
お茶の時間をこよなく愛する千早さんが、友人でも家族でもなく、読者を相手に開く、初めてのお茶会。長く暮らした京都の、なじみの台湾茶専門店の町家を会場に、お茶を介して交わされる言葉と時間を綴る。

ルポ/安達茉莉子「お茶修行日記 武夷山・岩茶の旅」
―青磁の蓋碗。茶杯はまだない。これが初めて買った、私の茶道具だ。――岩茶に出会い、お茶修行へと足を踏み入れた。産地である中国福建省・武夷山の旅をへて、逗子・小坪漁港で「山と海のお茶会」を開くまでの日々を綴る。

小説/山崎ナオコーラ「アリスは紅茶を飲まない」
黒髪のおかっぱを揺らしながら、7歳のアリスは地下に広がる森の中を颯爽と歩く。そこで出くわしたティーパーティーのテーブルにつくと、三月うさぎや帽子屋と不思議な問答が繰り広げられ――

小説/石井遊佳「ティータイム」
旅館で住み込みのルーム係として働く明里。朝の仕事を終え従業員寮に戻ると、見知らぬ兄妹と出会う。彼らは明里の同僚・吉川さんの子供で、小学校が夏休みの間だけ身を寄せているのだった。明里は彼らをお茶に誘い……。

小説/川野芽生「無茶と永遠」
「無茶会を開催いたします」――女学校の問題児3人組が、ある日突然お茶会を開いた。授業を抜け出し、校舎にぐるっと取り囲まれた中庭で、「お作法は全部あべこべ、ありもしないお茶を飲んで、始まりも終わりもないお茶会」を。

エッセイ/澤田瞳子「茶をめぐる日々」
茶と名がつくものは小さい頃から好きだったという澤田さん。お茶に欠かせないお菓子への愛はもちろんのこと、誰かと一緒におしゃべりして過ごす時間の清明さに、ティータイムの醍醐味を感じ、ある気づきを得る……。

エッセイ/赤坂憲雄「岡本太郎の茶会」
利休により編みあげられた茶の作法を、武力に対する「文化的なレジスタンス」だと読み解いた岡本太郎。しかし現代、古都・京都の茶会へ顔を出した太郎が目にしたのは、伝統にがんじがらめにされた茶道の姿だった。

エッセイ/石原あえか「チョコレート愛飲者ゲーテ」
マドレーヌと紅茶を小説に描いたプルースト、コーヒーがぶ飲みの逸話が残るシラー、そして飲み物としてのチョコレートが大好きだったゲーテ。彼も飲んだかもしれない「チョコレートスープ」のレシピ付きの楽しい随想。

エッセイ/清田隆之「俺たちは「お茶する」ことができるだろうか?――ケアの欠如とbeingの肯定」
長い時間を一緒に過ごしてきたけど、お互いのことはよく知らない……そんな「男同士の友情」の只中にいた清田さんに、ある日訪れたコミュニケーション革命、それは「お茶」だった。

【トークイベント載録】
くぼたのぞみ×斎藤真理子×岸本佐知子×八巻美恵「公開・塩の会」
昨年11月に開催された『曇る眼鏡を拭きながら』刊行記念イベントを載録。本書の内容にとどまらず、藤本和子の仕事から翻訳の営み、子育てまで、愉快で真面目な会話はどこまでも広がってゆき……。

【対談】
長島有里枝×飯田祐子「女性作家の自伝の読者は誰なのか?」
アーティスト・長島有里枝さんの「ケアの学校」展オープニングイベントとして行われた、名古屋大学大学院・飯田祐子教授との公開対談。創作とジェンダーの関係や創作におけるケアの効用について交わされた対話を載録。

【第48回すばる文学賞】
みずみずしく意欲的な力作・秀作をお待ちしています。募集要項は http://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/  をご覧ください!

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