注目は古川真人さん、石沢麻衣さん、上田岳弘さんの新作小説3本。
桜木紫乃さんの最新刊『情熱』の創作秘話を、大竹まことさんと語り尽くす対談も見逃せません。

【小説】
古川真人「豚の泳ぐ日」
豚の泳ぐ姿を見た。そう伯父から聞いた。「それで、豚はどうなったと? 捕まえることができたの?」今まさに眼前で起きたハプニングのように語られる、五十年以上も昔の長崎の島のこと。当時その港にいた人たちの、人生の経路と歴史が交錯する――。

【小説】
石沢麻依「糸芝居」
笑わない司書、アリアドネは私たちの視線を惹き付ける。美観地区といえば聞こえがいい古い屋敷街に、両親と、牛頭と呼ばれる弟と暮らしているらしい。夕闇に沈む路面電車の中で、私たちは今日も彼女を見つめる――。

【小説】
上田岳弘「ノー・ファンタジー」
経営する会社を売却して単調な日々を送る〈僕〉は、同窓会で15年ぶりに再会した〈三木遥〉と関係を持つようになる。結婚、出産、離婚を経て、現在は育児と仕事を両立させる三木。やがて日常とは〈別モード〉に入った三木が姿をのぞかせるが――。

【『情熱』刊行記念対談】
桜木紫乃×大竹まこと「情熱と分別の先にある、男と女のいい関係」
桜木紫乃さんの新作短編集『情熱』では、60歳前後と思しき男女の心の機微が描かれる。収録作の「ひも」は、大竹まことさんとの対話から生まれた作品。創作や、人生の後半に入った男女の幸福について語らう。

【論考】
四方田犬彦「エドワード・W・サイードの〈始まり〉」
1975年に刊行されたサイードの『始まり 意図と方法』についてはサイード論者のほとんどが言及を避けてきた。直観的な警句と逸脱、詩的な強度に満ちた断言と知的饒舌は魅力的だが、読者を疲弊もさせる。そんな書物を丁寧に読み解くと……。

【インタビュー】
宇野常寛「環境から主体へ、『庭の話』から『ラーメンと瞑想』へ」
中年男性二人が毎週ラーメンを食べ、瞑想する。そんな「朝活」が、実は「人間」的世界を相対化し超越する行為だった……! 最新刊でなされた思考の試みを手掛かりに、宇野氏の近年の批評活動について訊く。

【最終回】
岡野大嗣「夜なのに夜みたい」
息をするように穏やかに、目を凝らし耳を澄ませて、時間も距離もぽんと超えて、散文と短歌で集めてきたこの世界の差分のスケッチ。いよいよ最終回。

【新連載】
年森瑛「四捨五入したら趣味」
第127回文學界新人賞受賞作「N/A」の著者、年森さんには、好きではあるけど人に言えるほどではない、くらいの趣味が実は沢山あるらしい…! きらっと素敵な写真も添えて、たのしい趣味(?)の世界をめぐる連載エッセイが始まります。

【すばる文学賞】
第49回の予選通過作を発表しています。
第50回は応募受付中です。みずみずしく意欲的な力作・秀作をお待ちしています。募集要項は http://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/  をご覧ください!

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