第七回 渡辺淳一文学賞 贈賞式 選考委員講評と受賞者の言葉
2022年06月15日更新
2022年5月20日、本年度渡辺淳一文学賞の贈賞式が執り行われました。
今回も感染症予防のため例年より出席者を制限し、簡略化した式となりましたが、選考委員と受賞者のスピーチでは制作秘話や裏話なども飛び出し、大いに盛り上がりました。
受賞作 葉真中 顕さん 『灼熱』 新潮社刊
選考委員代表 浅田次郎さん
講評 浅田次郎さん
選考委員代表として講評を述べられた浅田次郎さんは「よくこれだけの物語をこの枚数でまとめられた」と、まず作品の重厚感と緻密さを讃えられました。また、ご自身の父親が経営していた会社の従業員が南米への移民を企図したというご記憶を交え、1960年代の移民ブームという背景に元々強いご関心があったことをお話しになり、「横着をせず正面からぶつかって書かれている。それがひしひしと伝わってきた」「書く能力だけではなく体力がないと書けない」「悪人を書くのがとても上手。いやらしいところがなくすごく良かった」など、作品そのものに大いに惹き込まれたことを述べ、今後より一層の期待を込めてエールを送られました。
受賞者挨拶 葉真中 顕さん
次に受賞者の葉真中顕さんが登壇され、受賞の言葉を述べられました。「浅田さんのお言葉が嬉しくて頭が真っ白になりました」と緊張の面持ちながら、「受賞の報せを受けたとき、発表は4月1日だと言われてやっぱり騙されているんじゃないかと思った」と振り返ると、会場内にも笑顔が広がりました。選評でも言及されていた取材の苦労については、「大変な苦労をされたのではないかと言われましたが、本当に大変でした。監修やブラジル取材、多くの方の協力なくしては書き切ることができなかった」と関係者各位への感謝を伝え、作中の話の軸となっている❝勝ち負け抗争❞について「現代のフェイクニュースやアメリカ大統領選のデマ、ウクライナ侵攻などにも通じる、今に続くテーマであると書きながら感じていた」とした上で「人間は事実をそのまま受け入れることがなかなかできないが、フィクションを書くことで与えられる共感や感動は多くの人に伝わるもの。小説を書くことで少しでも世の中を良くしていけるのではないか。まだその筆力がないチャレンジャーではあるが、今後もその気持ちで頑張っていきたい」と結びました。
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