北野作品の原点にして、渾身の青春バイオレンス小説! 『不良』6月5日(金)発売

あの北野武さんが、自身の幼少期を舞台に、ヤンチャで無茶な男の子たちの小説を書いている、と聞き、小躍りしました。
これは間違いなく面白くなる、と。
実際、60年代の東京下町の空気感と、そこで生きる悪ガキたちが活き活きと映し出される作品となりました。
飲酒、喫煙はもちろん、喧嘩、カツアゲ、あわや電車転倒の未遂事故に至るまで、度の過ぎたイタズラばかりの子供たちが、やがて本物の暴力と金の世界へ飛び込みます。
ヤクザとなって敵対する組に襲撃を掛けてシマを争い、ある者は死に、ある者は指を詰める。
乱暴に表現するなら「キッズ・リターン」と「アウトレイジ」を同時に楽しめるような小説です。
北野作品の全てが詰め込まれた本作、ぜひお手に取ってみてください。

●北野武さんから、刊行に寄せて

主人公一人であるキーちゃんには、ホントにモデルとして実在した男がいるんだよ。カッコよくて、喧嘩も強かった。泳げば死んじゃうような荒川に飛び込んじゃうわ、イタズラで、電車をひっくり返しそうなヒデえこともやったしね。
無鉄砲で、だらしなくて、とてつもない才能があるのに無駄にして死んでいった。でも、これ、下手すると俺だったかもしれないとずっと考えてきたことで、だから小説として浮かび上がってきたんだよ。そう、俺も、どうしようもなく、青春ってやつを無駄使いして、くたばっちまう不良になってたのかも。
物語の舞台は高度経済成長時代だけど、今も昔も変わんないよね。青春なんて無駄遣いしてるやつばっかだもの。同じように「もしかしたらこうなっていたかもしれない自分」という思いがあって、「3―4Ⅹ7月」にもそのイメージを彫ってる感じがするよね。今の、現実の俺も「胡蝶の夢」なんじゃないか。
いろいろ言い出すとキリがないけど、結局の所、バカをやったり、おっかないことが起きたり、努力がパーになったりする救いのない生き方、死に様ってのを描くのは俺の避けがたい生理なんじゃないのかな。
ちょっとマジメに言っちゃうと、いまとんでもなく生き死にの問題が差し迫った世の中でしょ? そんな時にこの物語に付き合ってくれて、なんか考えるキッカケになってくれりゃ嬉しいね。

●豪華推薦陣

・阿川佐和子さん
せつなくも愛おしい。プッと吹き出しつつ胸にキュンとくる。なんとアホらしくて美しい世界だろう。

・湊かなえさん
ダイナマイトを腹に巻き、ドブ川に飛び込むキーちゃん、カッコいい!キーちゃん、カッコいい! あぁ、正しく生きることに疲れているな。

・逢坂剛さん
その小説に馬力があるかないかは、だれにでもわかる。つまり、読み手を先へ先へとぐいぐい引っ張る、奔馬の力があるかないか、なのだ。そして『不良』には、それがある。