プロフィール
-
桜木 紫乃 (さくらぎ・しの)
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞をそれぞれ受賞。
『家族じまい』刊行記念 桜木紫乃さんインタビュー
「小説の仕事は、赦すことだと思うんです」
子育てに一区切りついた智代のもとに、突然かかってきた妹・乃理からの電話。
「ママがね、ぼけちゃったみたいなんだよ」
新しい商売に手を出しては借金を重ね、家族を振り回してきた横暴な父・猛夫と、そんな夫に苦労しながらも共に歳を重ね、今は記憶を失くしつつある母・サトミ。親の老いに直面して戸惑う姉妹と、さまざまに交差する人々。夫婦、親子、姉妹……家族はいったい、いつまで家族なのだろう。桜木紫乃さんの新刊は、北海道を舞台に、家族に正面から向き合った五編からなる連作短編集です。刊行にあたりお話を伺いました。
聞き手・構成=砂田明子/撮影=hiro
登場人物全員が私の内側という気がしています
─ 今回、家族をテーマに書かれるきっかけは何でしたか。
『ホテルローヤル』の担当編集者に、ホテルローヤルの“その後”を書きませんか、と言われたのがきっかけでした。直木賞をいただいたあの小説は、ホテルローヤルというラブホテルに集ってくる人々や、ホテルを経営する家族を、私にとってあったかもしれない話として書いたんですが、今度は真正面から、私が思う家族の形に取り組んでみませんか、という提案でした。えげつないところを突いてくるなと思って(笑)、ウンウン唸りながらどう書くか話し合っていたときに、最近聞くようになった「墓じまい」という言葉が浮かんだんです。「墓じまい」があるなら、「家族じまい」もあるんじゃないか、と言ったのはその担当編集者です。
いいタイトルだなと思って、家族じまいで何本か書いてみたいと思ったんです。で、私が思う家族じまいって何だろうと考えていくと、単純に家族を整理するとか、家族の誰かと縁を切るとかではなく、改めて振り返ることではないかと。だとしたら、私自身が経てきた、何てことのない家族の日常を書くだけで、「しまう」形に向かっていくのではないか。終わりを意味する「終う」ではなく、ものごとをたたんだり片付けたりする「仕舞う」ですね。そういう気持ちで書き始めました。
この小説に出てくる智代の家族構成は、私の家とほぼ同じなんです。起きる出来事はフィクションですが、智代の父と母を核とした家族関係は、我が家と同じです。父はもともと理髪店を営んでいて、最後、ラブホテルを経営していましたし、母親は今、認知症です。
─ ご自身の家族に寄せた設定で書くのはいかがでしたか?
書きやすい部分と書きづらい部分、両方ありました。ただ、結果的に、誰に取材をしたわけでもないけれど、各章の視点人物にした五人は、全員私の内側という気がしています。書くことで改めて自分と向き合えた一冊になりました。
―インタビューの続きは「青春と読書」6月号本誌か、青春と読書公式サイト http://seidoku.shueisha.co.jp/ でお楽しみください。
新着コンテンツ
-
インタビュー・対談2025年01月17日インタビュー・対談2025年01月17日
『キミコのよろよろ養生日記』刊行記念インタビュー 北大路公子「大病からの復活を綴る」
乳がん治療ですっかり失われてしまった体力・筋力・気力を取り戻すための養生の日々を北大路さんご自身に振り返ってもらいました。
-
お知らせ2025年01月17日お知らせ2025年01月17日
小説すばる2月号、好評発売中です!
注目は村山由佳さん、高橋弘希さんの新連載! 増島拓哉さん、北大路公子さんの新刊刊行記念企画も必読です!
-
連載2025年01月17日連載2025年01月17日
ナモナキ生活はつづく
第6回:カチューシャ問題
人それぞれの「どうしてもできないこと」。寺地さんの場合はテーマパークの「あれ」の着用が…
-
連載2025年01月16日連載2025年01月16日
ファン・ボルム『毎日読みます』【試し読み版/週刊連載】
ファン・ボルム/牧野美加訳
04:薄い本を読む
-
連載2025年01月15日連載2025年01月15日
【ネガティブ読書案内】
第37回 外山薫さん
「仕事を辞めたくなった時」
-
連載2025年01月10日連載2025年01月10日
ナモナキ生活はつづく
第5回:ハンカチワンダーランド
ハンカチっていいよね、から始まったはずが意外すぎる結論に……