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聞き手 酒井さんが三十歳頃に書かれた、「おばさん」というタイトルのエッセイを読んだのですが、その頃に感じていたおばさん像と、今現在感じていらっしゃるおばさん像はどう違いますか?

酒井 四十代になったら、もう完全に引退済みだと思っていたら、そうではなかったということが一番驚きです。何というか、(女性としての)引退ラインがどんどん延びていて、どうやったら人は引退できるのかと感じていますね。

白河 引退ラインってあるんでしょうか。友達を見ていると、結婚して子育てをして、子供が成人して全て譲り渡したところで引退かというと全然そんなことはない。逆に、「子供から手が離れたわ」とか言って、また現役に帰ってくる。

酒井 常に刺激がいっぱいの生活を送っていなくてはならない、みたいな感覚がある気がしません? 立ち止まってはならないというか。

白河 あとはやっぱり、先ほど出たたくさんのお皿を回す話に戻りますが、家庭も仕事も仲間も趣味も全部手に入れていかなきゃいけないという風潮がありますよね。この風潮は、アラフォーに限らずアラサーにも言えることなのですが、ある時期から、女性誌の企画で「憧れの先輩」といった記事を書くときに、独身の人を取上げることがなくなりました。
例えば、かつては憧れの女性として向田邦子さんが常連で挙げられていたんですけれども。とある三十代向けの雑誌では(担当編集者に)「今の読者にとって、憧れられる人は結婚して子供がいないとだめなんですっ」ってはっきり言われてショックでしたね。

酒井 一般の読者モデルが憧れの先輩として記事に登場する場合も、みんな子供がいる人ですよね。

白河 本当にそうですね。

酒井 変わってきているんですね。

白河 私は、酒井さんの『負け犬の遠吠え』のヒットが一つのターニングポイントだったと言っています。本当にビフォアー負け犬、BMと言えるぐらい変わったんじゃないですか。

聞き手 アフター負け犬でAM。

白河 若い人が、早く結婚しようとしている気がします。『負け犬の遠吠え』以後、当たり前だと思っていた結婚や出産が、うかうかしているとできないかもしれないということにみんなが気づいて意識がはっきりと変わったんでしょう。

聞き手 「結婚」というキーワードが出てきましたが、アラフォーの結婚事情というのはいかがでしょう。

酒井 四十代になって結婚する人って結構いるんですけど、上方婚をする人はほとんどいないですね。

白河 そうですね、ほとんどいないですね。でも、やっぱり上方婚志向なんですよね、アラフォー世代はどうしても。

聞き手 下には興味がないと。

酒井 いや、上方婚をしようと思っても、もうそんな相手はいないので下と結婚するんだと思います。

白河 上方婚というか、遺伝子的に優れた男が好きなの、何となく。

酒井 遺伝子的に優れた男…。

白河 そういうのが好きなんじゃないかなと。映画「セックス・アンド・ザ・シティ」を見ていても、弁護士のミランダみたいに、年収や仕事的には彼女より下の男性を選ぶという選択肢も描かれているけど、やっぱり主人公のキャリーの結婚には女性としての永遠の夢を感じました。

聞き手 納得の結末。

白河 納得というか、絵に描いたような「三高男」ミスター・ビッグと結ばれて落ち着いた訳ですから。

酒井 あと、儒教思想の影響で、自分より男の人は上であるべきだみたいな気持ちはすごくありますね。

白河 だからリードできない男性とかに対してものすごく厳しい。
「セックス・アンド・ザ・シティ」のテーマの一つに、アラフォー女性の強い友情がありますが、確かにこの世代は友情を大切にしますよね。逆に言えば、ひょっとしたら男性とは友達にはなれない世代だから、余計に女同士の友情が心地いいのかもしれない。

酒井 若い人は、同級生の男子を呼び捨てにしたりしていますよね。

白河 そうですね、もっと若い世代の人達にとっては、男の人はもっと仲間的という感じが見てとれるんですけど。でも私達で言えば、「男女七歳にして席を同じうせず」じゃないですが、男女は一緒じゃないといった隔てがある最後の世代かもしれない。 |
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