編集者のテマエミソ新刊案内
「家事や育児が問題なくできたとしても、仕事が人並み以下だったら男としては二流のような気がしちゃうんです。そういうのってわかりますか?」
作品中の一文です。担当編集(女)は、言っていることはわかるけど、本当の本当にはわかりえないなと思います。差別に対する声が上がり、徐々に大きくなっている昨今、当たり前のように是正していくべき問題はまだ山積みですが、もし身近な男性からこんな風にぽろっと漏らされたら、一人の家族として、友人として、あるいはパートナーとして、どう向き合っていけばいいのでしょうか。
今作『たてがみを捨てたライオンたち』には、自分にはえている「たてがみ」に気がついた三人の男性が登場します。
つわりに苦しむ妻を支えるなか、仕事で二軍の部署に異動が決まった。毎日やってられない。
……専業主夫になるべきか悩む30歳出版社社員、直樹
冷たい人間だという自覚はある、けど母を不幸にする父のような人間にもなりたくない。
……離婚して孤独をもてあます35歳広告マン、慎一
幻想を追いかけて何が悪い?そう思っているのは確かなのに、逃げているような気がするのはなぜだろう。
……モテないアイドルオタクの25歳公務員、幸太郎
三者三様の「たてがみ」を前に、彼らは何を決断するのか、その過程は多くの人にとって他人事ではないと思います。「今」こそ読んでいただきたい作品です。ぜひお手にとってみてください。
(編集MK)
著者プロフィール
- 白岩玄しらいわ・げん
- 一九八三年、京都府京都市生まれ。二〇〇四年「野ブタ。をプロデュース」で第四一回文藝賞を受賞しデビュー。同作は第一三二回芥川賞候補作となり、テレビドラマ化される。他の著書に『空に唄う』『愛について』『R30の欲望スイッチ―欲しがらない若者の、本当の欲望』『未婚30』、『ヒーロー!』など。