短期集中掲載が始まる岩城けいさんの「Ms エムズ」は、『Masato』『Matt』に続く完結編。井上荒野さんの「墓」、椎名誠さんの「遭難船」は心に波紋を広げる短編です。古川日出男さんの講演、李琴峰さんのロングエッセイ、木村友祐さんが聞き手となっての、弁護士・伊藤敬史さんのインタビュー、いずれも現代が抱える様々な問題への真摯な問いかけがあります。

【小説】

井上荒野「墓」

移住してきた若い夫婦としてタウン誌の取材を受けるため、「俺」と妻の蘭子は、家の外壁にペンキを塗っていた。そこへ突如現れた、茶色いトラ猫。そんなわけないだろう、と「俺」は首を振るが、本当はわかっていたのだ。その猫が「テル」だということを――。

【小説】

岩城けい「Ms エムズ(1)」

二十三歳の真人はメルボルンの大学に通い、三回生となっていた。移住以来の言葉の壁を乗り越え、今ではオージーに間違われさえする彼の前に、自らとは異なる形でアイデンティティの鎖に繋がれた女の子が現れる。『Masato』『Matt』に続く完結編。

【小説】

椎名誠「遭難船」

病室の窓の外はいちめんに黄金色の稲穂が輝く、鬼子平の田園地帯。美しい景色を眺めながら、「わたし」は変化のない日常に倦んでいる。しかし、入院仲間のカンシロウさんに見えているものは違うようで……。

【講演】

古川日出男「『現代』が文学的ターニング・ポイントとなるための要件」

2022年5月UCLAにてアメリカ日本文学会の定期学会が開催されました。今年の主題は「転換点(Turning Points)」。ポピュリズムの台頭やパンデミックによる世界の大きな変化に、作家はどう答えるか、古川日出男さんによる基調講演を載録します。

【ロングエッセイ】

李琴峰「歌舞伎町の夜に抱かれて」

大学時代に初めて訪れた東京。なかでも歌舞伎町は「一番街」のアーチを眺めるだけの遠い街だった。あれから十数年、作家となり東京に住むようになった筆者が、歌舞伎町の達人の案内を受けてこの街の深い魅力と素顔に迫る。

【インタビュー】

木村友祐「法と人間のあいだ――弁護士・伊藤敬史さんに聞く」

なぜ入管施設での死亡事故が起きるのか。なぜ人の命や生活よりも、国の方針や法・手続きが優先されるのか。「人間の尊厳」とは一体何か――。難民支援の現場に立つ伊藤弁護士の話から、文学の負うべき役割を問う。

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