暑い夏、井上荒野さん、中西智佐乃さん、川野芽生さんの新作小説で、
魂を震わせろ!
姜尚中さんの新連載「岸信介の思想と行動」では、昭和の戦後社会について考える。

【小説】
井上荒野「きらいじゃないけど飽きたんだ」
二年二組の澪の担任・寺谷先生は、背が高くくるくるした茶色い髪の人気者だ。寺谷先生は、逆上がりができない子たちを「チャレンジ隊」と呼ぶ。澪が逆上がりをできないのは、澪と鉄棒が敵同士だから。そして先生は、鉄棒の味方なのだ。

【小説】
中西智佐乃「長くなった夜を、」
38歳の「あなた」はコールセンターで働きながら、離婚して実家に身を寄せた妹・由梨の子ども、公彦の面倒をみる。絶対的権威をもつ父と、父からの指示を代弁して「あなた」に伝える母。「あなた」は寄り道も許されず仕事と育児に明け暮れて……。

【小説】
川野芽生「ゴーストとお茶を」
結婚により上層中流階級から上流階級の一員となったパメラは、ロンドンを離れ、カントリー・ハウスに籠りきりの生活にうんざりしていた。最も厄介なのは、屋敷に君臨する〈おばあさま〉だ。貴族の〈おばあさま〉は、人一倍幽霊を愛していて……。

【小説】
佐倉ユミ「蛹の家」
凪と香奈恵は幼稚園からずっと一緒にいた。凪と違い活発で優秀で目立つ香奈恵だったが、二人の不思議な縁は15歳まで続く。進路が分かれ、大人になっても、その縁は続くと思っていた。あるとき突然、メールが宛先不明で返ってきてしまうようになるまでは――

【連作 断識芸人】
辛島デイヴィッド「デハイドレーション」
朝、目が覚めると、父親、長男、次男が、僕の体に癒着していた。自然解離を待つか、手術で「デタッチ」することもできるという。毎日マッサージを欠かさず、大学の授業はオンラインで行い、なんとか四人一体の生活を始めるが……。

【新連載】
姜尚中「岸信介の思想と行動」
1957年から1960年まで内閣総理大臣を務めた岸信介。世界的に民主主義が後退する今、岸の存在感が増している。岸信介の戦後の歩みに焦点を当て、「戦争」と「空前の豊かさ」という両極端に引き裂かれた時代としての「昭和」について再考する。

【講演】
綿矢りさ「自分の声を聞くこと」
17歳で作家デビュー、歳を重ねながら新たな境地を切り拓いてきた綿矢氏。今年の月、ふるさと京都にある同志社大学で200人以上の学生を前に、自身の若いころや創作について語った。続く玉井教授との対談、学生との熱いやりとりを載録する。

【コラム連載最終回】
最果タヒ「きみを愛ちゃん」
全30回にわたるこの連載もいよいよ最終回。締めくくりのキャラクターに最果さんが選んだのは、なんと「太宰治」…! 実像を離れ、読み手の我々によって作りあげられた「太宰治」というキャラクターを掘り下げ、思考します。

【すばる文学賞】
第48回すばる文学賞予選通過作発表。
続く第49回も、みずみずしく意欲的な力作・秀作をお待ちしています。募集要項は http://subaru.shueisha.co.jp/bungakusho/  をご覧ください!

連載小説、対談、エッセイ、コラム等、豊富な内容で毎月6日発売です。